「ダーウィン以来(上)」SJグールド 浦本昌紀・寺田鴻訳(早川書房)
奥付を見ると84年に初版発行とあるから相当に古い。小説本に読み飽きると、自分の精神のバランスを回復するためか、自然にノンフィクションを読みたくなる。これは古くは中学生頃からの習性のようなもの。今回は、たまたまbookoffの100円コーナーで見つけた懐かしのグールド、主著「ワンダフルライフ」の感動をもう一度と即座に(上下)揃いを衝動買い。
読み出したら何とも楽しい。科学雑誌「ナチュラルヒストリー」に連載された科学エッセイをまとめたものらしいが、10ページほどで読みきりのまとまりのいい短編エッセイ。随所のにんまりする上質のユーモアを交えながら分かりやすくしかも刺激的に難しい科学情報を解説する。素人の知的好奇心を見事に刺激してくれる。エセ科学に対する鋭い揶揄を繰り出しながら、まどろみがちな好奇心を目ざめさせてくれる。1篇1篇が独立しているのでどこから読んでも楽しめるが、初めから順番に読むと、著者の意図した構成が浮かび上がるという仕掛け。
調べてみると今は同社より文庫版がでているらしいので、通勤電車などで楽しむのにはそちらの方がお勧めかもしれない。科学ってこんなに楽しかったかしら、学生時代にもう少しちゃんと勉強しとけばよかったなどという慙愧の念が浮かんできた。
内容は高度で複雑、とても要約などできないので、例によって目次を紹介する。
プロローグ
第一部 ダーウィン小論
1章 ダーウィンのためらい
2章 ダーウィンの航海中の回心−艦長との五年間の会食
3章 ダーウィンのジレンマ−「エヴォリューション」の長い旅
4章 早すぎるダーウィンヘの引導
第二部 ヒトの進化
5章 ヒトとチンパンジーとの差−量の問題か質の問題か
6章 ヒトの進化における灌木と梯子
7章 ヒトの真の父親としての子ども
8章 胎児として生まれるヒトの赤ん坊
第三部 風変わりな生物たちと進化の類例
9章 アイルランドヘラジカ
10章 生物の知恵−なぜキノバエは母親を食べるのか
11章 竹とセミとアダム・スミスの経済学
12章 完成化の問題−魚をのせている二枚貝
第四部 生物進化のパターンと区切り
13章 生命の五角形
14章 知られざる単細胞の英雄
15章 カンブリア紀の大爆発とシグモイド曲線
16章 大規模な絶滅
現在、楽しみに下巻を読んでいる途中、古い本だが中身は決して古びていない。読んでいると、少し賢くなったような気がするから不思議な本だ。是非ご賞味あれ。