武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 『プロ野球大事典』 玉木正之著(新潮文庫)1990年3月発行

 昨夜、不足してきた日用品を補充しに生協の大型店舗へ買い物に行ったついでに、bookoffに立ち寄った。最近の新聞で、bookoffの経営不振について知ってはいたが、ポイントカードのサービス廃止を告げられ、シュンとなった。全国どこに行っても、大きな町には店舗を見つけたが、今後どうなることやら。

 さて、書棚をぼんやり見ていて、ふと手を伸ばして立ち読みし、つい買ってしまった1冊の本が、素晴らしく面白かったので紹介しよう。105円のコーナーに置いてあったので買ったのだが、ラッキーな出会いだった。
 たまたま開いたページを拾い読みしてピンときたのだが、この本は、プロ野球にまつわる森羅万象を時には辛らつに、時にはとことん皮肉って、読者の頬の筋肉を何とか引きつらせてやろうというサービス精神に満ちた渾身の力作。底の浅い単なるくすぐり、駄洒落の類ではなく、相当の情報量と薀蓄に支えられた批評精神に満ちた本格ユーモア本、1人で読んでニヤニヤしているのもいいが、話が通じる友達に見せて、一緒にニンマリほくそえむのが正しい読み方かもしれない。
 全部で1277項目の見出しがあるらしいが、どのページを開いても確実に面白いところが凄い、真面目なだけの野球ファンなら怒り出すかもしれない、きわどくアブナイジョークの連発、とにかく笑える。野球中継がつまらなかったり、コマーシャルが入ったりして暇な時、この本をそばに置いて適当なページを開くと、楽しい気分になれること間違いなし。591ページもあるが、ほぼ全部のページで笑える。
 表題どおり徹頭徹尾、この国のプロ野球に取材した「悪魔の辞典」である。だが、笑いながら次々とページをめくってゆくと、いつの間にか、プロ野球やその選手達がなんだかいとおしくなってくるから不思議、プロ野球をめぐるボキャブラリーにこれだけ情熱と薀蓄を傾けられるなんて、著者のその姿勢に脱帽してしまう。野球が分からない人には、意味不明の記述が多いので、お薦めできない。
 その後、若い友人とこの本のことを話題にしていて気づいたこと、90年発行の本なので、可なりの内容が古くなってしまっているので、新しい情報をもとにした改訂版があるといいのだが・・・。