武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 『GOAL!①』DVDまたはWAWAW8月配信

 国際サッカー連盟が製作を公認した映画、と聞いただけで、見たい気にならず、ずっと見送ってきた映画だった。それが、昨晩、ふとした気まぐれからWAWAWの配信を見始めたら、引き込まれてついに最後まで見てしまった。2005年公開の古い映画だが、3部作の2作目が現在公開されているらしい。メキシコから合衆国に密入国者した貧困家族もとから、イングランドFAプレミアリーグで大活躍するまでの、典型的なサッカー少年のサクセスストーリ、小さな挫折を努力と僥倖によって乗り越えて、次第に成功をつかみ、栄光に導かれてゆく主人公サンチャゴに感情移入して見ていると、何時のまにか無垢な幸福感にひたることができる。

 世界最大の人気スポーツ、サッカーならではの社会構造に深く根付いた、サッカー文化というべきかサッカー社会というべきか、欧米におけるそんなサッカーの社会的な位置づけが見えて、面白い。この国で人気が高かった「スポーツ根性物」の範疇にはいる一作品といってしまえばそれまでだが、主人公の精神的な成長に軸を据えて、人間的な成長とスポーツの成功を深く絡ませたところが、なんとも教育的。「少林サッカー」の後味に比べれば、遥かに爽快感が残る。
 子どもに見せたくない場面もほとんどないので、家族揃ってみるのがお勧め。心臓発作で亡くなる主人公の父親の存在感が何ともいい。この映画の影の主人公という気がした。