武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 『軌道エレベーター―宇宙へ架ける橋』 石原藤夫、金子隆一著  (発行ハヤカワ・ノンフィクション文庫2009/7/5)


 以前に当ブログhttp://d.hatena.ne.jp/toumeioj3/20090201で紹介したことのある名著が、この度目出度くハヤカワ文庫で復活した。一人でも多くの方に読んでもらいたい科学エッセイの傑作、長らく絶版になっておりかねがね残念に思っていたので、これは嬉しい。
 内容にざっと目を通してみたが、ほとんど前著と同じ内容だったが、新たに著者の金子隆一さんと大野修一さん(軌道エレベータ協会会長)の対談が加わり、執筆時からの時代の推移をカバーしてある。残念だったのは、労作だった河野准志さんの<付録:「軌道エレベータ」SF作品リスト>が削除されてしまったこと。全体としてテキストが大きくなり読みやすくなっている。
 私は長らくこの<軌道エレベーター>なる概念について無知だったので、石原金子両氏の前著を手にして、現代科学の世界に大人の夢を復活させるという嬉しいプレゼントをいただき、今でもとても感謝している。ハヤカワ文庫の方が発行部数も多いので、より多くの読者の目に触れる機会ができたことを、我がことのように喜んでいる。
 分かりやすい文章を書くと言うことはどういうことなのか、そのお手本のような構成と展開も本書の大きな魅力の一つ、中学生以上の好奇心が旺盛な人なら、きっと本書から知的な感動と発見を得られるはず、科学エッセイの好きではなかった方も是非どうぞ。