武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 ワンプレートなブレックファスト(9)


 以前に<適温調理>という概念と調理法について簡単にご紹介した。そのことについてもう少し触れてみたい。熱を使った調理とは、食材の熱による化学変化のことである。どんな食材は、何度で何分加熱するとどうなるか、食材そのものが持つ味わいや食感、栄養素などがどのように変化するか、定量的で正確なデータは分かっているようで案外知られていない。

 市販されている夥しいばかりの料理本はどれを見ても、思いつきめいた恣意的な食材の組み合わせと、煮る・焼く・蒸す・揚げるなどの加熱方法は指示してあっても、素材自体の加熱時間の根拠は全く示されていない。料理本はそんなものだと言えばそれまでだが、私から見ると何だか頼りない。

 今のところ興味があるのは野菜についてだが、経験では加熱する場合ほとんどの葉物野菜は、沸騰したお湯に水差しして80度まで下げると、色も香りも良くなり、歯触りなどの食感も良く、冷蔵庫で保存しても保存性も生よりはるかに向上する。80度にすると湯がく時間もあまり神経質にならなくてもアバウトでも何とかなる。このように良いことだらけだが、物によっては80度では温度が足りない物もある。

 追記:70度で野菜を蒸して美味しくする方法もあるらしい。70度は試したことがないので分かりません。やってみます。調理用温度計があれば簡単にできます。

 例えば、春菊を湯がく場合、100度で沸騰させて、10〜20秒程度でさっと熱を通した方が、色も香りも保存性も良い。80度で湯がくと1分以上湯がいても、直に色が変わり急速に味も落ちてしまう。100度という温度が短時間だけれど何かで必要なのだろう。これは経験上わかていること。

 葉物ではないがオクラの加熱時間も、沸騰しているお湯に3分浸しておくと、ねっとりとした食物繊維がたくさん出てきて、オクラらしい味わいが何日も楽しめる。

 まだ、すべての野菜について分かっているわけではないが、個々の野菜には固有の最適加熱方法があるということだけは間違いない。おそらくそんなに遠くない将来、調理の温度と時間を食材ごとにコントロール出来るような調理器具が出来てくるのではないだろうか。電子レンジがややそれに近いが、まだまだ高温になりすぎて使いづらいところがある。スチームオーブンレンジも同じ。

 適温調理は、意外にも100度以下の調理温度としては低温を使うので、低温調理と言い換えてもいいほど、低温調理器具なんて誰も考えてくれそうにない、売れそうにないな。

それでは、今朝の献立を紹介しよう、左の上から下へ、ブロックごとに紹介していこう。低温調理をほどこしたものに○印を付けておきます。
○人参の温野菜
○菜の花のおひたし
ブロッコリーの温野菜
チンゲンサイの温野菜
・蕪の甘酢漬け
○湯がき塩菜
・レンコンの酢漬け
・芥子菜の浅漬け
・山葵菜の白キムチ
・プレーンオムレツ

それに
ベトナム風芹スープ(芹+油揚げ+ダイコン)
・白米ご飯7分盛り(蕗の葉と小魚のピリ辛振りかけ)
・画像に入っていないがコーヒー入りホット牛乳1カップ

料理学校で有名な「辻学園」が提供しているサイトに(真空調理)http://www.tec-tsuji.com/recipe2002/chef/cf-1.htmlというコンテンツがある。美味しそうなレシピが並んでいるが、大がかりなプロの調理法、家庭では簡単に真似できそうにないのが残念、これこそ適温調理の見事な実例なのに。