武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 ワンプレートなブレックファスト(10)


 何故野菜の加熱時間にこだわっているのか、野菜の旨味と養分を最大限に生かすのは、加熱時間が最も大切と考えているからである。味付けのことは、野菜に付け加える調味料のことであって、野菜そのものが持つ味のことではない。この食べ方は、野菜そのものの品質が悪いと、てきめんに味に響く、買ってきたその日のうちにほとんどの下処理をしてしまわないと困ったことになる。

 野菜に関してはもう少し書くと、実は味付けしなくても、良い具合に加熱すれば、野菜はそれ自体で充分に美味しい。無数にある野草の中で食べて安全で美味しい野草を選び出し、交配を繰り返して、最も美味しく仕立てあげられた特選の野草が、今栽培され食べられている野菜なのである。ほとんどの野菜は生でもけっこういけるが、適度な加熱でさらにさらに美味しくなる。野菜は長い農業文明の成果である。

 以前に外国ツアーで同席した何人かの方が、野菜の献立に「味がない」と言って、テーブルの塩などの調味料をたくさん振りかけたのを見て吃驚したことがあった。私が食べると、そのままでも一口ごとに滋味深い味わいがあり、感心するほど美味しかったので、恥ずかしい思いをした。現代人の濃厚調味料に汚染された味覚の麻痺状態を、元の状態に戻してやるだけで、野菜が本来持っている優しい、身体を内側から元気づけてくれるような深い味わいが感じ取れるようになってくる。野菜が本来持っている植物としてのパワーではないだろうか。

 大豆をはじめとするインゲン豆や小豆などの豆類も、最適な加熱によって柔らかく煮てやると、次世代の為に蓄えられた豆の中の養分が口ので、何とも言えない滋養に満ちた美味しさになって拡がる。お肉や魚も同様、加熱しすぎない適度な温度で調理すると、それ自体の味だけでたまらない美味しさが口いっぱいに拡がる。

 たくさんの種類の食材を混ぜ合わせたり、旨味調味料などで素材本来の味が分からなくなる程に濃厚に味付けされた人工的な料理は、本当に必要なのだろうか、とすら思えてくるから不思議である。新鮮な一日の始まりの朝の光の中で考えていると、そんなつまらない思いすら浮かんでくる。私は自然食信奉者でも、オーガニックの推奨者でもないが、美味しい野菜を噛みしめていると、ふとそんな想いが湧いてきてしまった。

それでは、今朝の献立を紹介しよう、左の上から下へ、ブロックごとに紹介していこう。
・菜の花のおひたし
・人参の温野菜
・蕪の甘酢漬け
・白菜の温野菜
チンゲンサイの温野菜
・山葵菜の白キムチ
・レンコンの酢漬け
・湯がき塩菜
・芥子菜の浅漬け
ラッキョウの甘酢漬け
・大豆と昆布の旨煮

それに
・味噌汁(豆腐+油揚げ+自家製切り干しダイコン)
・白米ご飯7分盛り
・画像に入っていないがコーヒー入りホット牛乳1カップ

このシリーズをアップして10回めになった。朝食だけのネタではくたびれるので、次回からは少し間をあけてみようと考えている。ある程度の手間をかければ、大切な朝食作りで、こんなことも出来るということを、これからもお知らせしていきます。