武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 朝のワンプレート(31)

《コンニャクぶきぶき》
 我が家では時々、「ピリ辛コンニャク」と称して、ゴマ油と豆板醤で調理して、あの独特の食感を愉しむことがある。そのコンニャクの食感をうまく言い表す言葉がないか探していたら、偶然に本山萩舟の「飲食事典」の「コンニャク」の項に、ピッタリの言葉が見つかった。(右の画像は「飲食事典」のコンニャクの料理の部分、キンピラコンニャンクと言う料理名は楽しい、もしかして誤植かな)
 「色が白くてやわらかいものより黒ずんでぶきぶきしたものがよい。」とあったのだ。この<ぶきぶきしたもの>と言う言い回しに思わず笑ってしまった。ビニル袋から取り出して手に取った時、水洗いして俎板で包丁を入れた時、乾煎りして水分をとばしている時、口に入れて噛みしめた時、良いコンニャクには確かに<ぶきぶき>した感触がある。ナタデココにも、少し似たような奇妙な食感があるけれど、コンニャクの<ぶきぶき>感は独特である。乾煎りををして水分をとばすのは、この<ぶきぶき>感をいっそう強め、同時に砂糖と醤油と豆板醤を混ぜ合わせた味を染み込み易くするためである。
 古くは平安時代の頃から食用にされ、期待できる養分には乏しいのに、「砂払い」などと言われて整腸作用が有難がられ、今でも食物繊維による整腸効果が期待されて食べ続けられている息の長い伝統食品コンニャク。
 全く不思議な食材である。おでんの具にないと寂しいし、和風の煮物にもあるのとないのとでは充実感が違ってくる。糸コンニャク(シラタキ)のないすき焼きも何だか物足りない。それ自体では献立の主役にはなりにくいが、名脇役のように料理の完成度を支える力がある。そんなコンニャクの存在感を<ぶきぶき>というオノマトペは見事に言い当てている。我が家では今後、コンニャクを食べる時、独特のぶきぶき感を愉しむようになるだろう。

 前置きはこれくらいにして、朝の献立を紹介してゆこう。コンニャクは使っていませんが・・・。

6月某日の朝食(上) ・味噌汁(油揚げ、大根、ナメコ)・ご飯・水菜のおひたし・トマト・空芯菜のおひたし・茹でキャベツのおひたし・ブロッコリーの温野菜・オクラの温野菜・モロッコインゲンの温野菜・春菊のおひたし・キュウリと芥子味噌・プレーンオムレツ・画像にはないがコーヒー入りホット牛乳


6月某日の朝食(下) ・味噌汁(油揚げ、タマネギ、ナメコ)・ご飯・茹でキャベツ・トマト・ブロッコリーの温野菜・水菜のおひたし・里芋の煮っ転がし・オクラの温野菜・モロッコインゲンの温野菜・キュウリと芥子味噌・プレーンオムレツ・画像にはないがコーヒー入りホット牛乳