武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

バッテリーの1巻 これから読む人のためにストーリを記述するのは止めよう。

①主人公の名前は原田巧(たくみ)、これから中学生になる12歳の少年。身体能力抜群の精神的にはややストイックな野球少年、ピッチャーとしての投球能力に天才的な素質を持ち、その一点に自己の存在理由を収斂させて生きている独立心旺盛で覇気のある少年。反抗期の入り口で早くも自我を確立しつつ、事あるごとに躓きよろめくところがなかなか読ませる。
②主人公に終始からんで興趣をもりあげる主人公の相棒が永倉豪(ごう)12歳。巧ほどではないが、抜群の身体能力をもち巧のスピードボールを見事に捕球し、主人公をリードして身体的ならびに精神的な成長をともにする野球少年。社交性に富み大人びていてしっかりした性格。
③この二人の出会い、相互に友情を深め合うプロセス、二人を取り巻く家族や野球仲間とのエピソードなど、熱っぽい語り口で話は進む。
④巧の祖父、元名野球監督の井岡洋三と弟の原田青波(せいは)の存在が、巧を上と下から支え、巧の人物像に奥行きを作りだしている。
⑤1巻目だけに登場する江藤君(有名私立中学へ進学する秀才少年)の渋い存在感とちょっぴり皮肉のきいた苦味が気に入った。鮮やかに巧の速球をバントする場面や別れの場面は秀逸、珠玉の短編を読むような味わいがある。
⑥井岡監督のかつての教え子、稲村君の配置も面白い。巧の引き立て役のようだが、中学生の世界をとりまく大人の世界のゆるやかな枠組みになっていて面白い。
⑦巧と豪の両方の母親の描き方がなんともステレオタイプすぎはしないか、女性作家が描く母親像がこうも負の要素に満ちた女性になるなんて、この点は男性から見てもちと物足りない気がする。
・今日は、1巻目をなぞってみた。次は、2巻目へと続けよう。