武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 Gaudi/Complete Works ガウディ全作品Cristina Montes (著), Aurora Cuito (著)(Feierabends)価格:¥2,330 (税込)791p 豪華で素敵なガウディ作品写真集

toumeioj32005-06-08

 解説は英語とスペイン語の二種類、同じ内容が書いてある。解説内容は、作品解説の他にガウディの生涯やガウディの芸術技法、芸術家としての手腕など。それよりも何よりも写真集としての内容が凄い。全791ページのうち700ページ以上がガウディ作品の写真で埋め尽くされている。写真はすべてカラー印刷、しっかりした用紙に緻密に印刷してあり、ページをめくるたびにわくわくする。
①凄いのはまずこの本のサイズ。12.5cm×12.5cm厚さ5cm。分厚くずしりと持ち重りがする。1ページが12,5×12,5のサイズなので見開きで使っても写真はとても小さい。ガウディをこのサイズでとらえることはかなりの冒険だったはず。これは著者のそうとうの思い切りがなければ出来なかった写真集だ。以前に細江英公の「ガウディの宇宙」という写真集を入手、しばらく眺めていたことがあるが、持つと手がだるくなるほどの大型本だった。細江英公が特大サイズの写真集にした気持ちが痛いほど分かる良い写真集だった。それと比べて、この写真集はいかにも小さい。しかし、レイアウトの工夫、撮影アングルの工夫、配列の工夫、多様な工夫の結果だと思うが、ガウディの世界が見事に収納されている。1枚1枚の写真が喚起するイメージは、想像以上に大きい。ガウディ作品の細部が充実しているせいもあるが、思い切って接近し、丹念に細部を見せ、細部の周辺をまとめてとらえられるようにカメラを引き、さらに下がって全景視野に納める。ページ数をつかってのこの演出が見事。ドラマチックな展開のうちにガウディの全貌を見せてくれる。またバルセロナへ行きたくなった。聖家族協会に接近してゆくときのあの高ぶり、興奮を思い出した。
②Complete Works全作品と銘打つだけあって、徹底して取材してある。何冊かガウディ関連の写真集や本などを見てきたが、初めて見る写真がたくさんある。これまでの本が見落としてきた映像が丹念に組み込まれていることもそうだが、撮影の角度がいい。ガウディ作品の無数のテーマをずばり正面から撮りきっているとでも言おうか。巧みなトリミングを施してあるのか、1枚の写真の納まりがいい。余分なものをはぶき、必要にして十分な映像に纏め上げている。本のサイズへの思い切った決断が、素晴らしい写真の切れ味をもたらしたのかもしれない。枕にちょうどいいほどの分厚いこの写真集をこの3ヶ月ほど、時間があるとき繰り返し眺めてきたが、全頁くまなく見てはいない気がする。あっちを見たりこっちを見たり膨大なガウディ作品の映像の中で迷子のようにふらついてきたが、とても楽しい体験をいまだに続けている。装丁を含めたデザインがなんともいえないくらい素晴らしい。所有欲を掻き立てる1冊だと思う。ガウディが好きな人、是非入手されたし。