武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 『糖尿列島「10人に1人の病」の黙示録』鴨志田恵一著(角川文庫)

toumeioj32006-01-25

 私の周りで糖尿病を患っているという話を最近耳にするケースが増えてきた。ここ10年ほどの間に糖尿病が原因の一つと思われる死亡者もいる。雑談の折に糖尿病が話題になると話が盛り上がり、間接的に知り合いの知り合いともなると患者数はどんどん増える。小児糖尿病の話も聞く。
 気になっていた成人病なので、まとまった本を読みたく思い本書を手に取った。内容は、新聞記者をやっていた記者が糖尿病を発症して入院、その入院生活をルポした第1章「入院生活」に始まり、第2章「社会への復帰」は、退院してからの自宅療養のようすと勤務復帰のようすについてのレポート。著者を襲ったハプニングからコントロールを失い、再び入院生活に逆戻りする辺りが何とも壮絶、自らの行為を<疑似自殺行為>と規定するあたりが身につまされる。
 第3章「患者急増の現状」では、糖尿病を通してこの国の文明批評を試みているが、この部分は感心しなかった。あくまでも患者急増の現状を、データと根拠ある論拠をもとに切り開いて欲しかった。
 本書を読むと糖尿病が一筋縄でいかない、厄介な病気だと言うことがわかる。本書ではあまり強調されていないが、資料のグラフを見ると、外来受診率も受療率も70歳〜80歳台がピークとなっており、50歳を過ぎた辺りからグラフは急カーブを描いて高くなっている。高齢化社会の進行とともに、今後はさらにこの国の糖尿病人口の増加が予想される。高齢化社会と糖尿病の関連なども取り上げてもらいたかった。
 糖尿病に関心はあるが、ほとんど予備知識を持たないという方には、お勧めかもしれない。分かりやすくすらりと読める。