武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 エジプト旅行④


 この日も早朝5時にモーニングコールしてもらい、アブシンベル神殿に射す朝日を見にゆく。日の出前にホテルを出て神殿前に歩いてゆく時、寒さに震えた。昼過ぎには20度近くにまで上がる気温が、早朝はコートを羽織っていても震えるほどに低い。高低差の激しい砂漠性の気候を体感。6時半頃に、ナセル湖の向こうの小高い丘の上から朝日が昇ってくる。 (朝日のアブシンベル神殿を見にきた観光客の向こうから登る太陽)

 振り返ると、神殿がうっすらと朝日を浴びて赤らんでいる。太陽を神として崇め、自らの支配の正当性の根拠とした王権のありようが、日の出とともに浮かび上がるという仕掛け。 (朝日を浴びて赤く輝く神殿、地面にカメラを置いて遅いシャッターで写したので動く人が透明人間になった)
 ホテルに戻り朝食をゆっくり楽しんだあと、再び観光客軍団(コンボイ)に加わり、はるばるヌビア砂漠を走ってアスワンに戻るバスの旅3時間、途中、非常に砂の目の細かい砂漠のわきに停車、砂の採取、スカラベがいるかもしれないと聞いていたので、木陰を探すが見当たらない。がっかりしていた時、誰かの「スカラベがいた」という声を聞きつけ、駆け寄ると、砂の上にうっすらと足跡を残して走るスカラベの何というかわいらしい姿。子どものころからの愛読書昆虫記の第1章の主人公の生きた姿に会えるとは、何という感激。ペットボトルに捕まえたが、可哀想だと言われて逃がしてきた。とんでもない悪い輩から逃れて、スカラベは、今も砂の上を這いまわっているだろうか。かすかに、惜しいことをしたという思いが今なお胸をよぎる。

 昼食の後、ナイル川に浮かぶ帆かけ舟ファルーカに乗船してナイル川のプチクルーズ、ヨットなので全くエンジンの振動なし、水の音と風の音だけの快適な船遊びだった。そのあと、スークと呼ばれる市場をひやかして散歩、客引きの声が激しく、どの商品にも値札がなく、値切り値切られの売買。薄利多売の日本の小売業とは、全く違う世界。買いたいものがほとんどないところがさびしい。 ナイル川の帆かけ舟ファルーカ、これに乗った)