武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 エジプト旅行⑤

 食事のせいで胃腸の具合が悪くなる人がよく出るという話を気にして、火を通してないものは食べないように気をつけてきたせいか、すこぶる体調良好。我慢できなくなってきたので、少しずつサラダのような生野菜にも恐る恐る手を出し始めたが、今のところ大丈夫。1日目のピラミッドの呪いの筋肉痛も、少しずつ治まってきた。

この日の観光はアスワン沿いに点在する神殿を北上しながら順番に観光し、ルクソール向かうというスケジュール。約1時間の移動で、エジプトの遺跡としては比較的新しい古代ローマの時代に完成したコム・オンボ神殿、さらに1時間ほどの移動でエドフという町にあるホルス神殿を観光。ここ数日、紀元前の神殿(教会ではない)めぐり続きで、少々集中力が衰えてきた感じ、日本で言うとお寺ではなくて神社なんだよなあ、などと思ったりしながら、しかし見ればいずれ劣らぬ圧倒的な迫力にたじたじとなり、12月とは思えないほど強烈な日差しの下、神殿巡りが続く。 (ホルス神殿のレリーフが一面に施された巨大な石柱、当時はこの上にさらに巨大な屋根がのっていたという)
 午前中の行程でルクソールに到着、午後はナイル川の東岸に集中するカルナック神殿ルクソール神殿を観光、最後にこじんまりとしたルクソール博物館を見学。ルクソール神殿で見たツタンカーメン王夫妻の石像のあまりのかわいらしさが印象的、わずか9歳で王座に就いたというが、その若さがあまりにリアルに伝わり、あわれみすら感じた。 (幼いツタンカーメン王夫妻のかわいらしい石像)

 たぶんカルナック神殿で見たレリーフだったと思うが、屋外の強烈な紫外線にさらされながら今なお鮮明に色を残している神殿の彩色に感嘆した。三千年近い時間の経過に耐えられる顔料、たぶん鉱物を原料とした絵具だろうが、強固に安定した絵の具の品質に頭が下がる。 (今なお鮮明な色彩を残している古代の彩色)
 それとともに思いが広がるのは、石材の建材としての耐久性、これらに比べたらコンクリートの建材としての何と脆弱なこと、私たちの身の回りに展開するデザインたちの何とはかないこと、思って見ても仕方のないことながら、何度もため息が出てしまった。現代文明のなんともはかないこと。