武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 エジプト旅行⑥

 神殿観光に飽きが来ていたので、この日からの「王家の谷」の墓場観光はいい気分転換になった。ナイル川をはさんで昨日は東岸の神殿観光だったが、今日は西岸の王様たちの墓地めぐり。バスを降りて、王家の谷に入ると、草1本生えていない地肌むき出しの荒涼とした地域になり、違った星の世界に入り込んだような幻想的な地帯、王家の谷より死の谷という印象。 (王家の谷の概要、こんな荒涼とした谷間の地下に60以上もの王様の墓がある)

 幸運だったが、私たちが訪れた時ツタンカーメンのミイラが、王墓の中で公開展示されていたこと、9歳ぐらいで即位し十代の後半で亡くなったと推測されている通り、頭も足もとても小さく、哀れを誘う。チケットの関係で他に2つの王墓が見られるので、現地ガイドが推薦するラムセス4世と9世の王墓にも入ってみる。壁面のいたるところに、一面のレリーフを施してあり、当時の権力者の死生観をうかがい知ることができた。

 続いて短時間のバス移動で、ハトシェプスト女王葬祭殿にゆく。ここはちょうど10年前に、イスラム過激派の銃撃で観光客が60名ほど殺されたところ、到る所に警備の兵士が配置され、物々しい雰囲気。そして、葬祭殿のすぐ近くにあるメムノンの巨像というのを見たが遺跡らしいものがあまり残っておらず、あえてバスを降りてみるほどのものではなかった。 (ハトシェプト女王の葬祭殿、古代エジプトの最初の女王が作らせた葬儀場)
 あまりに沢山の驚くべき遺跡を毎日見続けてきたせいか、集中力が続かなくなってきた。大きな岩山を削り取って作られて巨大な遺跡にも関わらず、それほど気持は動かない。壁面のレリーフの彩色の残りを見て顔料の保存性の良さに驚く。個人的に塗装ということに興味があるが、現在使われている塗装の技術では、10年もてばいいところ、じきには剥離するか色あせるかのどちらか、どんなに大事に保存してもまず100年は持たない。
 この日の観光はここまで、ナイル川をモーターボートで渡り、川沿いのレストランで昼食、午後はホテルの戻って荷物の整理をしたりしてのんびり。