武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 南インドツアー印象記(3)


 この日は、午前中に簡単なチェンナイ市内観光をして、1時間ほどかけてマドライへ国内線の空路移動、午後の残りでマドライの市内観光とあわただしい日程の一日。
 まずチェンナイ市内のヒンドゥー教寺院、<カパレーシュワラ寺院>、8時前の時間だったので寺院の周りの店は開店の準備中、インドでは花を摘んできて花飾りの首輪を作って売る商売が各地で見られる。いくつもの店で花輪の制作中だった。
 極彩色のヒンドゥーの神々で飾られたゴープラムと言う派手な門をくぐり境内に入る。境内はもちろん靴をぬいで裸足、早い時間なので敷石はまだ日に焼けておらずひんやりして気持ちいい。現役のお寺なので、一日の始まりのお参りで、境内ではたくさんの現地の人々があわただしくお祈りをして移動して行く。いくつもの派手な神殿が配置されており、お参りする人で人気が絶えない。
 一番気に入ったのは、高さ40mもあるきらびやかな神々のゴープラム、視覚化されたヒンドゥー教のシンボルとして見ていると、多神教の何たるかが視覚を通して何となく伝わって来るような気がする。時間があれば、倍率の高い双眼鏡でじっくりと四方向から眺めてみたい気がした。

 次に行ったのは、ローマ・カトリックの聖トマス教会、12使徒の一人聖トマスの遺骨が納められているという巡礼地、布教の来てこの地で皮を剥がれ殺されたという。十字架に架けられたキリストがインド風の白いガウンのような衣装を身につけていたので、ニヤリとなった。サリーを着たマリア像もあると言う話をきいた。
 午前中の最後はタルミナドウ州立博物館、南インドから集められた石造やレリーフが展示されていた。仏教関係の遺物が多く展示されている。館内は、エアコンがなく、次第に高まってきた高温多湿にまいった。

 昼には、国内線のエアインディアを使い、1時間をかけてマドゥライへ移動。機内では、3列シートの両脇がインド人、文庫本を読んでいたら話しかけられ、日本語の表記に縦書きと横書きがあり、行を読み進む方向が逆になると言うことが不思議だったらしく、3人奇妙に盛り上がってしまった。大柄なインド人二人に挟まれて、サンドイッチの具になったような気がした1時間だった。
 午後のマドゥライ観光は、まず、この地で栄えたナーヤカ王朝の宮殿、<ティルマライ・ナーヤカ宮殿>見学、大部分は壊されてしまい残っている部分だけの見学だったが、それでも宮殿の規模の大きさは想像できる。完全な形は、さぞや豪華だっただろうと、惜しい気がした。

 次に訪れたのは、ヒンドゥー教寺院の中でも規模の大きな<ミナークシ寺院>、ここでも境内は裸足になって歩き回るのだが、一部床が濡れていたりぬるぬるしていたりして、足の裏からインドがしみこんでくる気がする。ロータス池の回廊から見上げるゴープラムの煌びやかなこと、回廊の床や壁、天井を飾る宗教的な装飾の派手な色彩感覚、ヒンドゥー教のエネルギッシュさをしみじみ体感できる造りになっている。内部は、参観に訪れたインド人の人の波で、むせ返るような熱気に満ちていた。


 少し離れた所にある土産物屋のテラスから、寺院全体を俯瞰してみた。東西南北4つのゴープラムの配置と、千本柱の回廊の位置関係がつかめる、良い見晴台だった。中に入ってしまうと自分の居るところが分からなくなってしまう迷路のような境内だった。