武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 朝のワンプレート(26)

 《食物繊維について》

 先日、坂田隆さんの『大腸・内幕物語』(ブルーバックス)という新書を読んでいて、食物繊維について凄く分かりやすい説明を見つけ、人に教えたくなったので内容を簡単に紹介したい。
 著者によれば、「食物繊維はガンを防ぐ」「食物繊維さえとれば腸の病気はなくなる」などという言説は、ひとつの伝説だと言う。1960年にトロウェルとバーキットという2人の学者が、アフリカとヨーロッパの食事を比較して、繊維分の多い食事をしているアフリカの方が腸の病気が少ないという報告を出して評判になったことから、従来は栄養学的に問題にされていなかった食物繊維に注目が集まるようになった。
 これ以降、食物繊維は俄然食品ビジネスの対象ともなり、食物繊維の定義が拡張されて、時代と共にその捉え方が大変化してきた。以下に簡単に要約してみよう。食物繊維ビジネスの繁栄ぶりが一目瞭然。
【第一世代/植物性】セルロースを主成分とする食物繊維の時代。バーキットの説を受けて70年代に「穀物の繊維は万能薬」といった信仰に近い扱いを受けた時代があった。実際にセルローズは水に溶けず、微生物消化を受けにくいので、食物の栄養分を薄めたり、毒性のある物質を吸着するなどの作用が期待できる。
【第二世代/水溶性】やがて、果物や野菜、ジャムなどに含まれるペクチンやガム類などの水溶性の食物繊維に関心が広まった。これらの食物繊維は小腸で消化されないので大腸にまで届くが、微生物の消化を受けるので、その効用を期待するとしたら、水溶性故の粘性か微生物の作用により生ずる物質による効果である。
【第三世代/工業製品】オリゴ糖や糖アルコール類などの他の素材の加工や化学合成により製造されるものがさらに加わった。第二世代より粘性は低いが、工業的に作れるので品質管理が容易で、多様な性質を持つものが製造可能になってきている。「飲む食物繊維」がその代表、甘味料として使われているものが多い。
【第四世代/デンプン類】新たに注目を集めている食物繊維の仲間、デンプンも種類、食べ方、調理法によっては、小腸で消化されず大腸にまで届くものがある点に注目が集まっている。より粘性も少なく有害物質を吸着する力もないが、大腸内の細菌による発酵を受けやすく、その効果に期待が集まっているらしい。
 著者の結論は、いずれの食物繊維にも大腸ガンを予防するような明確な効果を期待するには無理があるが、糖の吸収を遅らせたり、大腸内の移動速度を早めるなどの効果はあると言うことだった。
 私の感想では、元々の食物繊維とは「ヒトの消化酵素では消化できない植物の構成成分」であったものが、範囲を広げて動物由来のものや化学合成のものも加わって「ヒトの消化酵素では消化できない食物成分」と範囲が拡大してきたこと、その効能たるやいろいろ期待はされているが、まだまだはっきりしていないことが多い。美容によかったり、ガン予防になったりなどという万能薬のような効能を期待する方が無理だと言うことが分かる。
 Wikipediaを見ると、肥満防止、コレステロール上昇防止、血糖値上昇防止、排便促進、ダイオキシン類の排出などと結構ずくめの効能が出ているがどうだろう。
 もともと消化されにくい性質のものだけれど、その性質ですら身体は上手く利用しているという生体のシステムのしたたかさは、何となく頼もしい感じがして面白い。
 それにしても、ヒトが大腸で飼っている細菌の多様で数の多いこと、それだけで一つの内的世界と呼びたくなるほど凄い世界である。単純ではあるが、彼らも立派な生命と考えると、生きていることの不思議さにため息が出てしまう。
 

 前置きはこれくらいにして、朝の献立を紹介してゆこう。今回も、都合により一週間のひとり暮らしの折の朝食です。食物繊維たっぷりと言う気もするがどうだろう(笑)。

5月某日の朝食(上) ・市販のネギ若芽スープ・ご飯・もやしのおひたし・ブロッコリーの温野菜・パプリカの温野菜・レンコンのきんぴら・蕗の旨煮・カブの甘酢漬け・ゴーヤと油揚げの炒め物・キュウリのキムチ・サツマイモの温野菜・セロリのキムチ・プレーンオムレツ・画像にはないがコーヒー入りホット牛乳

5月某日の朝食(下) ・味噌汁(青海苔、油揚げ、大根)・ご飯・春菊ののおひたし・トマト・ブロッコリーの温野菜・蕗の旨煮・ほうれん草のおひたし・島らっきょうのキムチ・ニラのおひたし・キュウリのキムチ。カブの甘酢漬け・オクラのゴマよごし・プレーンオムレツ・画像にはないがコーヒー入りホット牛乳