武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 「イカのスペイン風炒め物」 

 料理の本を読むのが好き。レシピ集もご馳走写真集も食べ歩き随筆も何でも読んでいて楽しい。我が家の子ども達もおいしそうな料理写真集をよだれをたらしながら嘗めるように見て、「見ているだけで太りそう」という意味で「見太り」なる珍語を作り、料理本を楽しんだ。作ってみたいという気にさせてくれるレシピ集に出会うとうれしくなる。中公文庫で出ている壇一雄著「壇流クッキング」は、旅情と味覚の両方を独特のたくましい文体で満たしてくれる私の愛読書だ。
 その中にある「イカのスペイン風炒め物」を紹介してみよう。ホームパーティーで毎回好評を博し、職場の女性たちにも簡単でおいしいと評判がいいので、気が向いたら作ってみて。失敗する余地のない一品です。
<材料>イカはどんな種類でもOK。ヤリイカスルメイカ、モンゴウイカなど。ホタルイカはちと無理かも。とにかくイカを丸ごと全体を使う。②調味料は、オリーブオイル、塩コショウ、お酒、ニンニク、唐辛子、バター、ローリエまたはサフラン(なくても何とかなる)。
<調理法>①捨てるのはイカの軟骨、トンビ、目玉だけ。あとは肝も墨も内臓も全部ぶつ切りにしてボールに入れて混ぜ合わせ、品の悪いイカの塩辛のようなものを作る。②薄く塩コショウをして、サフランローリエで香りをつけ、15分以上放置して味をなじませる。③フライパンにオリーブオイルを敷き、つぶしたニンニクひとかけと唐辛子一本を入れ、加熱する。④煙が上がる頃、一挙にイカを放り込み、かき混ぜて最後にコクを出すためにバターをひとかけ加えて出来上がり。イカのほぼ全てを無駄なくいただくという美味しくて合理的な海洋民族の知恵のような料理。
※もちろん、新鮮で肝も内臓も墨もたっぷりあるうまそうなイカほど美味しくなるのは当たり前、お皿に残るイカ墨ソースの一滴までご賞味あれ。結構癖になる味。パスタとあえても美味しいよ。