武蔵野日和下駄

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 「プラテーロとわたし」秋・冬編 J・R・ヒメネス著 伊藤武好/百合子訳 長新太・画 (理論社フォア文庫) 昨日の続き

toumeioj32005-06-28

 長新太さんの訃報をきっかけに引っ張り出してきたヒメネス散文詩集、プラテーロ。10年以上前になるが、近代のスペイン文学史が気になり、調べてみようとして困惑したことを思い出した。言語の普及割合と比較して、スペイン語圏からの文学作品の紹介が不釣合いなほど少なくて、ほとんど手に入る情報や本がなく困った。
 ちなみに第一言語として使用する人口の多い方から言語のベストテンを選ぶと次のようになる。

1 中国語 (1,000)、2 英語 (350)、3 スペイン語 (250) 、4 ヒンディー語 (200) 、5 アラビア語 (150) 、6 ベンガル語 (150) 、7 ロシア語 (150)、8 ポルトガル語 (135)、9 日本語 (120) 、10 ドイツ語 (100)

 公用語として使用している人口の多い方からベストテンを選ぶと次のようになる。

1 英語 (1,400)、2 中国語 (1,000)、3 ヒンディー語 (700)、4 スペイン語 (280)、5 ロシア語 (270)、6 フランス語 (220)、7 アラビア語 (170)、8 ポルトガル語 (160)、9 マレー語 (160)、10 ベンガル語 (150)単位は100万人。

 スペイン語の順位は第一言語としても公用語としても、抜群の普及ぶりなのだが、日本への紹介はお粗末。大きな書店へ行っても、外国文学の書棚には英米文学がほとんどを占め、仏文学、独文学、露文学などがほんの僅か、西班牙(スペイン)はいずこという状態。
 話がそれてしまった。ヒメネスのプラテーロは、そんな状況の中で、ドンキホーテと並ぶ勢いで児童文学にまで進出していて驚いた。さて、話をプラテーロにもどそう。この詩集には、「アンダルシアのエレジー1907年〜1916年」という副題が添えられえいるように、138編の内容は、プラテーロの紹介に始まりプラテーロの死で終わる連作詩編の形をとる。描かれるのは、春に始まり夏をへ秋から冬へ向かうアンダルシア地方モゲールの街の豊かな自然の移り変わり。そこで暮らす子ども達、町の人々、動植物。しみじみとした語り口で、ロバであるプラテーロに語りかける口調で共感をもって語られてゆく。
 すこし単調な感じがしないでもないが、それはヒメネスの静かな語り方のせいだろう。読んでいて、波立つ心が静まるような不思議な力を持つ詩集。今でも手に入ればいいが。