武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 早朝の爽やか散歩

 GWあたりから日中の気温が高くなってきて、歩いているだけで体温の上昇を抑えきれず、背中の真ん中辺りからじっとりと汗ばむようになってきた。シャツのボタンを外したり袖をめくってみたりながら、体温調節に心がけているが、快適さを通り越して暑苦しくなりがち。そこで、日の出1時間すぎの頃に自宅を抜け出して、早朝散歩にでかけている。

 太陽の位置が低く、武蔵野の雑木林にはまだ夜の気配が、薄ぼんやりと名残をとどめている。道端の雑草に朝露が残り、日の光にあわせて開く花びらはまだ閉じたまま。歩調を上げると、顔に当たる風がひんやりとして気持ちがいい。植栽の葉っぱに触ると、指先が濡れる。雑草の草むらに不用意に足を踏み入れると、シューズとズボンの裾が濡れてしまう。(画像は元気一杯のオオイヌノフグリ
 雉の鳴き声や朝帰りの猫とよく出会う。野生化した鳩が、盛んに鳴き声を立てている。一日の活動が始まったばかりの、生活のざわめきのような微かな騒音が、住宅街から響いてくる。時間がたつと、開けた場所に朝日が差してくる。低い位置から降り注ぐ朝の光にも、淡い温かみがあり、初めは眼を細めるほど眩しい。
 朝の出勤時に、いつも見ていた光景なのに、退職者の立場になってのんびりと散歩してみると、街のワンカットの情景として味わうことができる。1時間ほど歩き回って、眠気が完全に蒸発したころに帰宅する。今日一日の時間が、全部自分のための時間であることが、何ともうれしい。退屈している暇がない。