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 「校庭使用20mSv」の基準決定プロセスを究明したい

30日の遅くになって、共同通信が配信した記事は興味深かった。問題となっている福島県の校庭使用基準についての通知は、原子力安全委員会で正式に検討されたものでなかったと言う指摘である。良い記事だったので、以下に全文を引用しておこう。

審議2時間で「妥当」判断 原子力安全委、学校基準で(2011/04/30/21:57共同通信

 福島第1原発事故で、文部科学省から小中学校などの屋外活動を制限する基準値への助言を求められた国の原子力安全委員会(班目春樹委員長)が、正式な委員会を招集せず、助言要請から約2時間後には「妥当だ」との助言をまとめ、回答していたことが30日、関係者の話で分かった。

 安全委事務局は「臨機応変の対応だった」と反論するが、正式な委員会が開かれなかったため議事録も作られておらず、助言までに至る議論の内容が確認できないことも判明。審議の検証ができなくなった異例の事態に「国の政策を追認しただけだ」と批判の声が上がっている。

 国は、目安を一般人の年間許容限度の20倍という高さの年間20ミリシーベルトとした根拠について国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告に準拠したとしているが、子どもに高い放射線量の被ばくを認めることになるため、内外の専門家から批判が続出。29日、内閣官房参与の小佐古敏荘・東大大学院教授が辞任する一因ともなった。

 関係者によると、文科省などが「年間の積算放射線量が20ミリシーベルトに達するかどうかを目安とし、毎時3・8マイクロシーベルトを学校での屋外活動の基準とする」との原案への助言を安全委に求めたのは19日午後2時ごろ。安全委側は正式な委員会を開かず「委員会内部で検討し」(関係者)、午後4時ごろに「妥当だ」と回答した。だが、議事録が残っていないため、安全委内部でどのような議論が行われたかは明らかではないという。

 安全委事務局は「9日ごろに文科省から相談したいとの依頼があり、委員らが複数回議論、その都度結果を文科省に口頭で連絡していた。正式な会議は開かなかったが、意思統一ができれば助言はできる」とコメント。「(検討時間の)妥当性については発言する立場にない」としている。

 基準の撤回を求めている環境保護団体、FoE(地球の友)ジャパンの満田夏花さんは「独立した規制機関であるはずの安全委が、ほとんど議論もせずに国の政策を追認したことは明らかだ」と指摘。「子どもの健康を守るという重要な責務も、社会への説明責任もまったく果たしていない」と批判している。

この取材姿勢を高く評価するという前提で、無いものねだりを付け加えておきたい。
この記事は、安全委員会のずさんな検討過程を批判するスタンスをとっており、原案をつくった文科省のことは問題にしていない。
子ども達の命と健康を何よりも重視するはずの文科省から出た原案が「年間の積算放射線量が20ミリシーベルトに達するかどうかを目安とし、毎時3・8マイクロシーベルトを学校での屋外活動の基準とする」となっていたという、この事実は軽くない。
通知の発信者に名前を並べている以下の4人である。

文部科学省生涯学習政策局長 板東久美子
初等中等教育局長  山中伸一
科学技術・学術政策局長 合田隆史
スポーツ・青少年局長  布村幸彦

問題の基準値は、そもそも文科省の中から出てきた数値だった。文科省内部でどのような審議検討を経た上で決定されたことなのか、一体何に気を遣って子ども達の命をかくも軽視したのか、こちらの方も是非明らかにしてほしい気がする。

政策決定のプロセスはすべてが公務であり、税による負担によって遂行されるので、細大漏らさず情報公開の対象となるべき性質のものである。誰が何を発案し、誰の承認のもとにどのように動いたか、検証されるべき事柄はとても多い。すでに安全委員会で30ミリシーベルトに承認に関わったとされる2名の委員名までが判明している。誤りの追求は詳細で鋭いほど効果的で威力が増す。