武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 花々で溢れ始めた武蔵野の小道

 気候が良くなってきたので、散歩に出ると、目と耳を楽しませるものに事欠かない。目に楽しいのは、次々と咲き出した道端の花々。畑にも作物の花が咲き出したので、観賞用の豪華なばっちりお化粧したような花々とは一味違う、清楚な野菜たちの花々がひっそりと咲いている。私は、野菜の花の、慎ましやかな美しさが何とも好きだ。

 まだ、昆虫達の出迎えは多くはないが、しっかりと花を見つけてやってきて、蜜を集めている。その一心不乱の仕事振りが、また孤独な散歩者の目を楽しませてくれる。
 耳に楽しかったのは、雉の雄の鳴き声。きつく喉を締め付けて発声するような、独特の鳴き声は、何らかの警戒信号なのかもしれない。背中から尻尾にかけて、鮮やかな色の羽根飾りをまとって、すばやく視界を横切って消えた。茶畑の一角にもぐったようだったが、探してもどこにもいなかった。素晴らしい逃げ足だ。
 住宅街に帰ってくると、庭の園芸植物がこれまた、一斉に花をつけていて目を楽しませてくれる。1時間ばかりの短い散歩だが、強い紫外線を浴びるのを承知で出かけてしまう。