武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 『ゼロからわかる個人投資』真壁昭夫著(講談社現代新書)

 定年退職して、自由になった時間を活用、生まれて初めてお金の運用方法について、少し勉強してみようという気になり、何冊か投資に関する本を読み始めた。これまで全く縁のなかった世界なので何を読んでも難しく、もどかしく、わからないことが多い。言葉の意味としては何となくわかる気がするが、実感としてしっくりしない。知識だけを得ようとしてもこのわかりにくさは変わらないと思い、ある銀行から少し投資信託なるものを買い、何とか感じをつかもうとしているが、どうなる事やら。

 そんな初心者のそのまた初心者の私にも、比較的よくわかる本に出会ったので紹介したい。<ゼロからわかる>との題名通り、投資について全く何も知らない私にも、<投資をする>ということはどういうことで、どんなことに気をつければいいか、スッキリとわかったような気にさせてくれた。
 導入がなかなかいい。「投資の魅力と怖さはやらなきゃ分からない、まず体で覚えることが必要」と始まる。ゼロからわかることを標榜する本の書き出しが、この突き放したような文句で始まるのが、なかなかいい。これまで分かりにくかった理由がわかる。そして、次が「アマの個人投資家もプロに勝てる」とくる。しかも、文章は明解で説得力がある。先を読もうという気にさせられる展開がうまい。ハウツーの知識を適度に織り交ぜながら、投資についての初歩的知識を次々と説明してくれて、とてもわかりやすい。投資とは、時間を味方につけるために手持ちの資産を有効に活用しようとする行為なんだということが理解できす。勿論、合理的にお金を増やすことには変わりはないが。
 実際に、投資という行動に出るためには、別の参考書が必要になると思うが、投資ということについて、ある程度の予備知識を得るには、ぴったりの一冊という気がした。詳しい内容については、目次を引用するので参考にしてほしい。

第1章 心得編―投資の前に知っておくべき八の鉄則
第2章 実践編その1―生活の知恵としての投資理論入門
第3章 実践編その2―さまざまな金融商品の特性
第4章 思索編―個人投資家のための「考えるヒント」

 実践編があまり実践の役に立ちそうにないところなど、入門書としてかえって適切なような気がして、むしろそこが気に入った。投資について全く未経験の、でも投資に興味のある方に、ぜひお勧めしたい。