武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 塩原温泉郷へ紅葉狩りに

 時間が空いたので、栃木の山奥の塩原温泉郷に、紅葉狩りを兼ねて行ってきた。紅葉は高原に行くと最盛期を過ぎており、徐々に山裾を平地に向かって紅葉の波が山を下っているところ。1000mを過ぎると風景は冬景色。幸いインディアンサマー(小春日和)の一日だったので、寒くはなかったが高山では自然は冬を迎える準備を完了していた。

 宿泊した温泉宿が気に入ったので、紹介したい。塩原温泉郷の一番奥、山の中の元湯温泉と呼ばれている一角にある古い温泉旅館「大出館」。以前に、奥日光の温泉につかって湯船で雑談していた折、珍しい温泉があると紹介された黒い湯の温泉。茶褐色の温泉ならいくつか入ったことがあるので、そのようなものかと思って聞いてみるとどうも違うらしい。タオルが黒く染まるほどに、とにかく黒い湯だそうだった。今回は、そこへ行った。 (画像は大出館を下から見上げたところ、左側の別棟に墨の湯がある)
 旅館では「墨の湯」と名づけ、時間によって女性専用になったり混浴になったりのその宿のいくつかある湯船の中では一番人気の湯だった。恐る恐る入ってみたが、噂にたがわず薄墨色、茶褐色などではなくまさに黒、日によって濃い日と薄い日があるらしいが、基調は黒。世界で一つという触れ込みだが、こうゆう温泉は初めて。入浴した感じは意外とサラリとしており、別の湯船の白濁している温泉のほうが柔らかい感じ。タオルを浸すと薄く鼠色に染まる。面白い温泉だった。
 この旅館は、いくつもの種類の違う八つもの湯船を持っており、それぞれの効能が違うというから面白い。野天風呂(神経痛)、御所の湯(胃腸病)、平家かくれの湯(糖尿病)、墨の湯(リューマチ)、子宝の湯(婦人病)、婦人風呂(胃腸病)などなど。どの湯も飲用できて効能があるというから、まるで薬みたい、医学的にはどうかとも思うが、いろいろな効き目が楽しめて精神的には楽しめる。
 建物自体は古く、はっきり言って若い人には不向きだろう。ウィークデイに行ったこともあるが、お客のほとんどは高齢者、おじいさんおばあさんのパラダイスといった感じ。出される食事も素朴で、私は気に入ったが、若者向きではないような気がした。料金も安く、連泊するとさらに6000円台に値下がりするので、湯治向きの旅館。一泊だけで帰るのがもったいない気がした。