武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 どこでもやってる、食べ残しの使いまわし

 yahooのニュースを見ていたら、やっぱりそうか、と奇妙に納得する厭なニュースにぶつかった。飲食店における、客の食べ残しの使いまわし事例である。食品衛生法には、この件の想定がなく現状では法的に野放し状態。禁止にしなくても食のモラルとして何とかならないか。
 客には見た目しか分からないから、歯型でもついていなければ、使いまわしかどうか絶対にわからない。信義の問題だと思うが、誰も信じる気になれない現代、自分で作ったものを自分で食べるしかないということか。
 気持の良いニュースではないが、未読の方にも読んでいただき、外食について考えるとき、チト思い出してもらいたいので、全文引用させていただこう。

ウチでもやってます!“食べ残し・使いまわし” (5月18日10時0分配信 日刊ゲンダイ)

 客の食べ残しを使い回していた「船場吉兆」――。盛り直した刺し身や焼き直したアユを「老舗の味」と言って高いカネで食わせていたのだから恐れ入る。しかし、飲食店、旅館などの従業員に聞くと、“使い回し”は日常茶飯だという

●旅館
 東北地方の有名旅館の板前がこう言う。
「旅館は夕食時間がだいたい同じだから、生ものの使い回しは少ないと思うけど、この季節だと、客がまったく箸を付けなかった“若竹煮”のタケノコを翌日も使うことはある。なぜ箸を付けてないとわかるかって? 上にあしらった木の芽がそのままだもの」
 朝食の味付け海苔やパックの納豆も、開封されていなければ別の客に出すし、割られていない温泉卵、生卵も使う。いやいや、生ものだって使い回す旅館はあるらしい。
「無理にお客さんに料理を勧めるなって言われる旅館があるの。残ったお刺し身を甘辛く煮て、館内の居酒屋コーナーでお通しにしてるらしい。アジのお刺し身をつみれにするって話を仲居さんから聞いたこともある」(和倉温泉のコンパニオン)

●割烹
割烹店のなかにシカツという隠語があるんです。資源活用を縮めてシカツ。親方が“シカツにしろ”と言ったら、使い回ししろという意味なんですね。汁だけ飲んで具のアサリが残っていたら、熱い汁を加えてシカツ、エビのてんぷらは衣をはがしてから揚げ直し、天丼にしてシカツというわけです」(外食に詳しいジャーナリスト・吾妻博勝氏)

●食べ放題
 カニ食べ放題店でやたらに焦げたものが出てきたことがある。
「もう腹いっぱいなのに、子供が駄々こねて追加注文する親子連れって多いんだ。結局、1本だけ食って出てっちゃうんだけど、これじゃ採算取れないっすよ。残ったのはバーナーであぶってまた出す。タラバはこれができるけど、毛ガニは1匹で出すから1本でも脚がないと使い回しできない。酢の物には使うけど……」(カニ食べ放題店店長)
 脚の先の細くとがった部分は食べ残されることが多く、ザルで洗ってカニ汁のダシに使う。
 寿司食べ放題の日帰りバスツアーが人気だが、再利用はないのか。
「1人前の盛り合わせを食べ終わってから、ネタごとの食べ放題になるので、食べ残しは少ないですね。それでもネタを塩水で洗って握り直す店はありますよ。ウチでも大葉やガリはもう一度使います」(房総半島の寿司食べ放題店主人)

●中華店
「食べ残しのギョーザや春巻きが1人前の個数揃ったら、焼き直し、揚げ直しで出す店があると聞きます。マーボー豆腐は手が込んでいて、できたての熱いのを皿の底に敷いてから食べ残しをのせ、その上から熱いのを入れて、冷たくなったのがわからないようにするのがコツだそうです」(吾妻博勝氏=前出)

●ビアガーデン
 飲み残しにつぎ足しただけではぬるいので、2つのジョッキに半分ずつ分けてからつぎ足す。

●カレー専門店
「カレーを入れたポットにルーがかなり残っていたら、ビーフやシーフードなど種類別に集めておいて、新しく作るときに加えます」(店員)

●韓国料理
「前の店では、戻ってきた肉はもう一度タレにつけて出したり、クッパなんかに使ってたよ。キムチはチゲ鍋。野菜焼きなんかはそのままだった」(上野の焼き肉店アルバイト)

 いやはや、この国には節約精神がかくも普及していたとは、自分の無知に恥じ入った次第。そのうちに、どこか大手外食産業から、食べ残し活用マニュアルなどが、漏洩するかもしれない。稚拙ながら、客にばれないノウハウがあるみたい、ちゃっかりと業界用語まであると知って仰天、<資活>とはこれいかに 。あるいは、全世界的な現象かもしれないが、知らぬはお客ばかりなりということか。
 外食産業に提案したい、食べ残しの使い回しがどうしてもやめられないのなら、ぜひメニューに、「使い回し半額メニュー」なるメニューを追加してもらいたい。意外なヒット商品になるかも・・・(笑)。
 厚生労働省は、外食産業の実態調査をしてみてはどうだろう、使い回しの掛け値なしの実態知るのは、なんだか怖いような気もするが。
 なお、通常テーブルに一度出した食べ物の残りは、手をつけてあろうがなかろうが<残飯>と呼んでおり、お店などからでるものは法的には<産業廃棄物>に分類され、法的に適正な処理を義務付けられている。それを再び客に商品として出す行為は、<リユース>と言えばいいのか<不法投棄>と言えばいいのか、<ゴミ問題>はまったく奥が深い・・・(苦笑)