武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 武蔵野の小春日和


 11月の後半から、天候の変化が激しい。暖かい日は10月を思わせ寒い日は1月を思わせる。最高気温が15度を越えたり10度以下にとどまっていたりで、こちらの気分も体調も天候に大きく左右される。
 今日は、絵に描いたような小春日和、午前中に用事をすませて、昼食の後は散歩に出た。自宅からの方角で言うと、いつもはあまり行かない東の方、そちらにも車の往来の激しい県道を一つ越えれば、大きな雑木林が拡がっている。
 大きな霊園を取り囲むように、広い平地林が秋の紅葉に彩られて、紅葉から落ち葉の季節へと移り変わりつつある。
 私は北陸の山国で育ったせいか、武蔵野の平地林を歩いていると、どこか異国の地を歩いているという奇妙な気分になってしまう。山国では平地は田畑に耕し尽くされて、雑木林は嶮しい山肌にしか生えていなかったせいで、何となく武蔵野の雑木林を見ていると<贅沢な雑木林>と呟いてしまうのだ。

 音がするのでじっとしていたら、二羽のコゲラが木の虫をつつき取りながらだんだん近付いてきた。カメラを構えてじっとしていたら、警戒を緩めてすぐ近くにまで近寄ってきてくれた。ほかにも、せわしない可愛らしい鳴き声を振りまきながらメジロの群れが通り過ぎていった。気持ちと時間にゆとりがあって、しばらく動かないで待っていると、意外と野鳥との距離は短くなる。
 この時期の晴れた日の武蔵野の雑木林には、得も言われぬ風情がある。同好の士だろうか、三人の高齢者の散歩者とすれ違った。