武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 5月第3週に手にした本(16〜22)

*情けないことに書庫にあることを忘れて同じ本を買ったり、読んだことすら忘れて図書館に予約を入れたりするようになってきた。読んだり読みかけたりした本を備忘録としてメモ、週1で更新しています。(今週もたくさんの本を手にしたが全部読了できたわけではありません。)
谷川俊太郎著『うつむく青年』(サンリオ1989/10)*既読の詩集だったが、著者の署名入りが105円で売られていたので、つい買ってしまった。一読、洗練されきった言葉使いと、意味の展開の巧みさに何時も通り魅了された。上手い、あまりに上手い、上手すぎる。
◎上橋菜穗子著『獣の奏者―2王獣編』(講談社2006/11)*シリーズの2巻目、物語は速度を増して、堂々たるクライマックスを築き上げ、余韻を残し見事に完結する。舌を巻くような物語巧者である。
ベルグソン著/林達夫訳『笑い』(岩波文庫1976/11改版)*これまでに何度もこの本からの引用に出会ったが、手にするのは初めて。要領のいい可笑しさの分類と分析、フランス風の知性横溢。
◎上橋菜穗子著『獣の奏者―3探求編』(講談社2009/8)*2巻までは少女の成長物語だったが、3巻目からは成長した主人公の家族を取り囲む異世界の歴史物語へと、スケールを拡大する。魔法は出てこないが、プロットを組み立てる軸に主人公の特異な能力が使われるところが、この物語のファンタジーたる所以。
小海永二著『現代詩の構図』(文弘社1977/3)*広い視野に立った70年代における戦後詩の概観、多くの詩人の作品に触れながら、丁寧に俯瞰されておりとても分かりやすい。30年以上経った今読むと、現代詩史を読んでいるような気がしてくる。
◎輪島祐介著『創られた「日本の心」神話―「演歌」をめぐる戦後大衆音楽史』(光文社新書2010/10)*新書ながら350ページの本文に充実した参考文献をつけた力のこもった戦後大衆音楽史、演歌=日本の心と安易に語られるマスメディアの神話批判。だが、そんなことよりも丁寧に戦後大衆音楽を時系列で辿った記述が鮮明で、おぼろな記憶を呼び覚まされて楽しく読めた。