武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 新たな生活空間の構築(5)


 山荘を手に入れてほぼ2ヶ月がたった。現住所での付き合いが何かと忙しくて、こちらで宿泊できたのはのべ2週間にも満たない。それでも春から初夏へと移り変わる動植物の変化は楽しかった。

 4月には、たくさんのカメムシが屋内に侵入してきて、対策に追われた。触ると臭いので掃除機で吸い取ってみたら、掃除機の排気が臭くなり参った。そこで思いついたのは、塗装工事用の養生テープ、ガムテープでは粘着力が強すぎて剥がすのに苦労するので、剥がれやすい養生テープでそっと背中をくっつけてつかまえ、粉薬を包む要領で包み込んで始末することにした。養生テープは価格が安いのでどんどん使った。100匹以上始末したら、いつの間にかいなくなった。屋外のほうが過ごしやすい気候になったので、屋内には侵入してこなくなったのだろう。

 4月の後半には、2種類のアリがさかんに進入してきて、脱出できなくなり床で死んでいるという現象がしばらく続いた。図鑑で調べたら、大きいほうはクロオオアリ、中型のやつがヤマクロアリだろうと分かった。ヤマクロアリの方が巣別れの季節だったのか、その羽アリがたくさん進入してきた。その時は、クロオオアリは死んだ羽アリを餌にするらしく、咥えて運ぶのをよくみかけた。5月の下旬には、今度はクロオオアリの巣別れになったらしく、その羽アリが来ている。外に出ると、さらに小型のアリが盛んに活動するようになってきた。

 何種類ものアリが活動するので、アリの多様性も面白いと思っていたら、今度はアリの天敵、ウスバカゲロウの幼虫のアリジゴクが、軒下の雨のかからない乾燥した地面に、クレーターのような穴を掘っているのを見つけた。見ているとアリは巧みにクレーターを回避しながら、忙しそうに働いている。アリをびっくりさせたら落ちるかと思って、刺激してみたがうまく穴を避けて逃げ回っていた。なるほどと感心した。山荘でも基本的に農薬殺虫剤の類は使用しないことにしている。(上の画像は、軒下に出来ているアリジゴクの穴)

 山荘周辺の動植物を見ていると、いつの間にか時間がたってしまう。雑草の草刈や倒木の始末など、やらなければと思う仕事は一向にすすまない。

 まとまった時間があると、壁面に取り付ける書棚作りに精出している。古い木造家屋のせいか、微妙にゆがんでいるところがあり、精密に作ってもわずかに隙間が出来てしまうので調整が難しい。久しぶりの木工作なので、カンを取り戻すのに時間がかかっている。コンクリート造りのマンションとは勝手が違う。家屋を支えている太い柱も、もとは生きて成長してきた樹木だった。個体差もあれば、部位の違いによる硬軟の差異もあるに違いない。木造家屋とは、ゆっくりと朽ちてゆく樹木の躯体との息の長い付き合いだと納得している次第。