武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 新たな生活空間の構築(55)


《自然界の厳しさ》

8月になって赤城山荘周辺の植物は最盛期をむかえ
繁茂した草木の密度がジャングルなみになってきた。
特に茎や幹がなくて他の植物に絡んで成長する蔓草の成長が物凄い。
一日に数十センチ延びるスピードぶりなので
用事があって数日間留守にすると1メートル以上伸びひろがり
あらゆる物に絡まり、始末に終えない。


可愛らしい花が咲くヘクソカズラと言うかわいそうな名の蔓草がある。
これの成長ぶりには目を瞠る。
茎も葉も薄い黄緑で一見弱々しそうだがひっぱてみると意外と強い。
粗雑に引くと、絡まっている草木の方を痛めてしまいそうになる。
植林した山の下草刈の仕事をする林業者や農家の憎まれもの、
その臭いといい、執拗な生命力といい憎しみのあまり
悔し紛れに進呈したネーミングではないかと推測したくなるほど。


そんな生命力全開の雑木林では
それらの緑を食料にしている昆虫たちの成育も旺盛、
小道を歩くと小さなバッタやカマキリその他の昆虫が
モゾモゾ、ピョンピョン、跳ねてゆく。
早くもアキアカネ、オニヤンマなどのトンボ、トカゲその他
蝶や蜂なども盛んに飛び回っている。


先日、湿度の高かった日の夕方、十数羽のツバメの集団が突如
赤城山荘を取り囲む空間に飛来、
数十分あまり物凄いスピードで急旋回
激しく鳴き交わしながら虫取りをしていった。
そろそろ子育ても終わり南に渡る時期が近いのだろうか、
いつもは静かな雑木林が突然にぎやかに沸き立ち
しばらくして急にしんとなってしまった。
また来るかなと期待していたが一回限りの訪問だったようだ。


元気に幼虫取りに精をだしていたアシナガバチにも異変があった。
玄関の軒先に大きな巣を作っていたアシナガバチ
オオスズメバチの襲撃をうけて蛹を全部食べられるという事件があった。
玄関を開けたら、カリカリという煎餅をかじるような音がしたので見上げると
オオスズメバチがアシナガの巣を噛み破る襲撃の真っ最中、
巣の破片がヒラヒラ落ちてくるほどたった一匹だがその破壊行動は猛々しい。
十数匹いたアシナガバチは手の施しようもなく
周りで呆然と見守るばかり、
用事があって出かける時だったので撮影もできず、
アシナガバチを守ってやることもできず
数日して戻ってみると、アシナガの巣の幼虫は全部食べられてしまい
十数匹のアシナガバチと空の巣だけが残されていた。
(画像は、オオスズメバチの襲撃で巣を食い破られ、幼虫を失い、呆然としているアシナガの母親と娘たち)


他にも、原因は分からないけれど、営巣の途中で放棄された
アシナガバチの巣が何箇所もある。
去年の巣は全部撤去したはずなので
放棄された巣は全部今年のもの、
天敵や事故などのトラブルが避けられない自然界が
いかに厳しい生育環境かということが実感される出来事だった。