武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 新たな生活空間の構築(53)


《大木伐採の二年目》

山荘が売りに出ていた二年前、元の所有者は販売促進のために
大きく育っていた樹木を思い切って十数本伐採し、
日当たりの良い場所にイメージ転換したようだ。
比較的新しい切り株を数えると大きな切り株がたくさん見つかる。
今はその切り株から盛んに萌芽更新が始まっている。
(右の画像は屋根の下の外壁に巣作りしているホソアシアシナガバチ


雑木林の木を切ると、後の林に何が起きるか
そんな実験に住み込みで付き合っているような興味津々の日々、
全体が傾斜地なので土壌崩壊だけは回避しなくてはならないが。
今年はその二年目、たくさんの日光がこれまで暗かった林床にとどき
一斉に眠っていた草木の種が目覚め
成長を押さえられていた小さかった苗が伸び始める。
伐採一年目だった去年と比べると
草も木も花も葉も見違えるように元気が良い。


植物が元気だとその植物を食べて育つ昆虫たちも
元気がでてきて、昆虫をついばむ野鳥も沢山集まってくる。
実感として、虫も鳥も増えたような気がする。
逆に、山荘の中へ侵入してきていたカメムシやアリなどの
気がかりだった虫の侵入が激減した。
空き家だったところに人が住み
こまめに清掃するようになり換気も良くなり
室内が虫にとって居心地の良い場所ではなくなったからだろう。
あるいは屋外の方が居心地がいいからかもしれない(笑)。


一方、人との共存が得意な生き物はというと
アシナガバチの巣がさらに増えていることに気がついた。
しかも、これまで気づかなかったホソアシアシナガバチという
新しい種類のアシナガバチの巣作りもみつかった。
全部で5つのアシナガの家族が営巣している。
その他に、暑くなってきたせいか
小さな虫を餌にしているヤモリを見かけるようになってきた。
敷地内では、農薬や殺虫剤を原則使用しないので
間接的な汚染は避けようがない時代だけれど
化学薬品の洗礼を一切受けていない動植物たちは
元気いっぱいに跳ね回っているのを見るのは気持ちが良い。


収穫量を気にかけるような農作業をはじめると
つい農薬や消毒のことを考えたくなるので
山荘では農業の真似事はしないで、
土地に合いそうな草木を最小限植えるほかは
植わっているもの、生えてくるものの成長を愉しむことにしている。
訪問客に言っている「庭造りはしない」「農業はしない」という意味は
自然のままを愉しむということなのである。