武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 新たな生活空間の構築(11)

我が山荘の立地は山林、家屋が建っている所だけが僅かな平地、
それ以外はことごとく斜面で出来ている。
人工的に造成された法面ではなく、自然に形成された斜面のようである。
人工であろうと自然であろうと斜面なので、大雨が降ると表層の土壌が流される。
豪雨の後で見回ってみると何箇所か表層の土が流れ出した跡がみつかる。
今は大したことになっていないが、長年の雨水の浸食が累積すると
やがては困ったことになりかねない。
何らかの斜面対策が必要である。
当面、現状を維持してゆくために何ができるか考えてみた。


 敷地の斜面には一面に笹が生い茂っている。以前にも書いたが、この笹を生かすのが第一の土壌流出策になると思われる。笹を退治しようとするとわかるが、笹の生命力は凄い。その活力源はおそらくその地下茎にある。地中に縦横に張り巡らされた地下茎と根っこのネットワークが天然の土壌流失防止に役立っているものと思われる。そのことに気づいた時から笹を敵視するのをやめ、笹のお陰様と感謝することに態度がかわった。

 斜面の笹は高さをそろえる以上には伐採するのをやめ、住人が敷地内をうろつくための小道は刈り取ってあるが、その他の斜面では思う存分に繁茂するに任せてある。要するにホッタラカシ。外からはこの小道は見えないので、一面の笹薮しか見えないようになっている。これからの薮蚊が思いやられるぞ(笑)。


 もう一つの斜面対策は、樹木の萌芽更新(ほうがこうしん)の見守りである。と言うのは、この土地は販売促進のため、旧所有者によって大量に樹木が伐採された経緯があるからである。1年ほど前に常緑樹と落葉樹の大木が十数本切り倒されたのである。おかげで家屋は日当たりが良くなり、冬場でも晴れた日はポカポカして気持ち良くなったけれど、林の密度が薄くなった。地上にも日の光が降り注ぐようになり、雑草の成長振りに目をみはるものがある。(画像は敷地内の切り株から新芽を出し始めた萌芽更新の一例)

 樹木の根っこの地中の広がりと深まりは凄い。斜面に生えている木々は、土砂崩れ防止機能をもった天然のグランドアンカーになっているものと思われる。その樹木が切られたと言うことは、グランドアンカーが撤去されたのに近い。これから木々が育ってくるまでには何十年もかかってしまう、土壌にとってはイエローカードを出されたに近い状況であろう。

 そこで思いついたのが昔の雑木林管理法である、萌芽更新の手法がそれ。育った樹木は切って燃料や建材として利用し、残された根っこから生えてくる新芽を大事に育てて、再び樹木に育て上げるという方法である。言わば、既存の根っこを生きたまま再利用する根っこのリユースである。根が生きていれば、グランドアンカーとしての機能が引き続き期待できる。中には、萌芽更新ができない常緑樹もあるが、落葉樹には萌芽更新が得意なものが多い。

 敷地内を見回ってみると、盛んに萌芽更新をはじめた切り株が多い。それらは大事に見守り天然のグランドアンカーとして、大事に育てて生きたいと考えている。昔の人の知恵はあなどれない。これで出されたイエローカードは気にしなくてもよくなった。笹に感謝し切り株に感謝すると言う、自然に依拠するシンプルな方法が、山荘の現在の土壌対策である。何と安上がりなこと(苦笑)。