武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 新たな生活空間の構築(67)


《野良猫サンちゃんその5》

 昨年暮れの昼下がり、白昼堂々と子どものイノシシが山荘の脇を通り抜けていったのには驚いた。ウリボウほどは幼くはないけれどまだ成獣には程遠い子どものイノシシだった。通いなれた道を通る気楽な雰囲気で山荘の南の軒下をトコトコと通り過ぎていった。鉢合わせしないように気をつけようとツレと話し合った。

 以前は、沢山の野良猫や飼い猫たちも山荘の敷地を自由に行き来していたのだけれど、サンちゃんと名付けた黒猫が山荘を気に入ったらしく、執拗な縄張り争いの末にとうとう自分のテリトリーとして確保したらしい。他の猫たちが全く来なくなってしまったのはチト淋しい。山荘と周辺の敷地は、とうとうサンちゃんのなわばりとして周辺の猫社会に認知されたのかもしれない。今はサンちゃんだけが堂々と我が物顔で山荘の敷地をのし歩いている。(画像は、リビングの床で寝そべっているサンちゃん、ドアの前で住人の移動をチェックしている)

 以前にも書いたことだけれど、サンちゃんはを山荘を二つの機能を持つものとして認知しているようである。その一つは確実に餌が手に入るレストラン。初めの頃は古びた煮干し少々だったけれど、最近では通称カリカリと呼ばれる猫餌を提供してもらえるようになった。住人が食事の時には、猫が食べられそうな珍味を投げてもらえることもあり、サンちゃんは食事時をねらってしばしばやってくる。

 もう一つは、安心して気持ちよく寝られるホテルとしての機能。山荘には興味本位にちょっかいを出す子どもや子どものような大人もいなくて、じっと黙って読書していることが多く、空いている椅子の寝心地もまあまあなので、熟睡している時間が長くなってきた。日当たりのいいリビングは、冬でも日中は暖房なしで20度ちかくにまで室温が上昇するので、老夫婦を見習って、サンちゃんはのんびり日向ぼっこを楽しんでいることが多い。

 赤城山麓の野良猫なのに、サンちゃんは赤城颪(おろし)が苦手のようだ。北風がゴーゴー吹き荒れる日は、なかなか外に出ようとはぜず、いつまでも部屋の中でぐずぐずしている。窓の隙間から鼻先を出してみて、目をシパシパさせて室内に戻ってしまい、暖かそうな所を見つけて丸くなって寝てしまうのである。最近は、掘り炬燵にかけてある掛け布団の縁がお気に入り。