武蔵野日和下駄

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君が代訴訟に注目すべき判決

 4月下旬のことでちと古い話ですが、注目すべき判決が教育関連裁判で出ているので、いくつかの新聞報道を引用します。ここ数年、この国の教育現場で進行している君が代強制と処分の動きに波紋を投げかける判例となるかも知れません。強制されると反発したくなる気持ちよく分かります。

君が代訴訟」、処分を一部取り消し 福岡地裁判決朝日新聞2005年04月26日>
 北九州市立の小、中、養護学校の入学式や卒業式での君が代斉唱をめぐり、「良心に反する」などと着席したまま歌わなかった教職員18人と教職員組合が、職務命令に従わなかったとして市教委から受けた処分の取り消しや損害賠償を求めた訴訟の判決が26日、福岡地裁であった。亀川清長裁判長は、市教委の裁量権を逸脱しているとして減給処分4件についての取り消しを命じ、他の処分の取り消しと賠償請求については棄却した。職務命令については、思想良心の自由を定めた憲法19条には違反しないとの判断を示した。

 訴えていたのは、小学校教諭の稲田純さん(47)らと、稲田さんらが所属する「北九州がっこうユニオン・うい」。

 稲田さんらは89〜99年にあった入学式や卒業式で、校長から「起立して斉唱する」との職務命令を受けたが、「特殊な歴史的背景を持つ君が代は歌えない」として、着席したまま歌わなかった。北九州市教委は、減給や戒告などの処分にした。

 同市教委は、式での「国旗掲揚と国歌斉唱の徹底」を求めた85年の文部省通知や学習指導要領などを受け、「全員が起立して、正しく心を込めて斉唱すること」などとする「4点指導」と呼ばれる独自の手引を策定し、各校長に、これに従った職務命令を出すよう指示した。

 原告側は「『正しく心を込めて』という文言は内心にまで踏み込んだ介入で、学習指導要領をも逸脱している」と主張。また、処分を伴う職務命令は君が代斉唱の強制にあたり、思想良心の自由を定めた憲法19条に反すると訴えていた。

 これに対し市教委側は、4点指導は学習指導要領の趣旨に沿ったもので、「国旗国歌を尊重するために常識的で自然なもの。心を込めて歌うことは音楽科の基本」と反論していた。

君が代:斉唱拒否教諭へ処分取り消し 福岡地裁毎日新聞 2005年4月26日>
 卒業式などで君が代斉唱を拒否し懲戒処分などを受けた北九州市の小中学校教諭らが市教委などに処分の取り消しと損害賠償を求めた訴訟で、福岡地裁は26日、3人の原告に対する4件の減給処分の取り消しを命じた。「国旗・国歌法」の施行(99年)以来、教育現場では君が代斉唱を拒むなどして処分され処分取り消しを求める訴訟が相次いでいる。亀川清長裁判長は「憲法違反などはないが、減給処分は重すぎる」と判断した。

 訴えていたのは、同市内の教諭らで作る「北九州がっこうユニオン・うい」と組合員ら18人。市教委は文部省(当時)が入学式などで君が代斉唱の徹底を通知したのを受け、86年からピアノ伴奏や起立して斉唱することなどを指導。原告らは斉唱を強く求められ、従わないと懲戒処分や文書訓告などになった。

 原告らは「斉唱の強制は思想や信条の自由を定めた憲法に違反する」として、処分の取り消しと計163万円の損害賠償を求めて96年と00年に提訴。同市教委側は「指導は学習指導要領と文部省通知に沿ったもの」などと反論した。