武蔵野日和下駄

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 《「学歴詐称」で大阪市職員965人を停職1カ月》の記事に思うこと

 今朝の朝日新聞の社会面にでていた大阪市職員の学歴詐称問題を読み、心が痛んだ。受験資格の上で、詐称といわれても仕方のないのは事実だが、よほどの事情がない限り、人は下方に学歴を偽ったりしないもの。技能職の受験年齢が35歳までと幅があったのと、この国が一時期、氷河期とも呼ばれる厳しい就職難の時代があったことが、背景となってのことらしい。
 せめてもの救いは、大阪市の対応が「自主申告すれば停職1カ月にとどめる」という緩やかな方針を採用したこと。尼崎市や神戸市の諭旨免職は厳罰に過ぎる気がする。1000人近い対象者がいたと言うことは、同様の事例は、大阪市に限らないのではないか。おそらく、全国の都市部の行政職員の方で、肝を冷やしている方々がいらっしゃるのではないか。格差社会の進行が、このような形で処分問題として浮上してくるのは、何ともたまらない。
 この国で、先進工業国としては異常ともいえる高い自殺率が続くのには、背景となる社会の深刻な歪みがあるから。選択肢として、「逆学歴詐称」のほうがよっぽどましではないか。悲しく悲惨な雇用実態が次々と明らかになっている「派遣社員」となって過酷に搾取されるよりも、賢明な進路選択だったのではないかという気がする。 以下に、その朝日新聞の記事をそっくり引用する。

学歴詐称」で大阪市職員965人を停職1カ月<2007年06月28日朝刊> 
 大阪市は27日、大学・短大を卒業したのに、高校卒業だけを受験資格とする試験などで採用されていた「学歴詐称」の職員965人全員を停職1カ月とする処分を発表した。前例のない「大量停職」で業務に支障が出ないよう、停職時期を7月(404人)と8月(561人)に分けるほか、公園の清掃や放置自転車の整理など8種類のボランティアメニューを示し、参加を勧める。市税や保育料などを滞納していた職員80人についても、減給から文書訓告までの処分を決めた。
 学歴を低く偽る詐称は、大阪市に先立って兵庫県尼崎市や神戸市で発覚。「本来なら合格していた受験者の採用の機会を奪った」として、尼崎市は2人、神戸市は36人を諭旨免職にした。
 大阪市は「うみを出しきることが大事」(関淳一市長)として、自主申告すれば停職1カ月にとどめる方針を決め、職員約4万5000人中、大卒採用者らを除く約3万3500人を対象に調査。自主申告した1141人のうち、965人を詐称と認定した。処分は28日付。実際の学歴は665人が大学卒、300人が短大卒などだった。
 内訳は男性750人、女性215人。年齢は23歳から59歳までで、40代が442人で最多。採用年次を5年ごとにみると、1973〜77年の10人から増加を続け、バブル崩壊後の就職難だった1998〜2002年の278人がピークだった。
 部局別では、環境局179人▽市教委事務局143人▽建設局138人▽交通局116人の4部門で計576人と6割近くを占めた。環境局はごみ収集作業員やごみ焼却工場の作業員、市教委は給食調理員や学校の管理作業員らが大半。建設局は下水処理場や道路の維持管理にあたる職員、交通局は地下鉄駅職員やバス運転手らが多かった。
 停職期間は給与が支払われないほか、市の規則によって処分者は昇給のペースが遅れるため、40代の職員では、生涯賃金で200万円以上の減収になることもあるという。市は停職期間中に「市民の誤解や不信を招く行動」がないよう注意喚起するとともに、「自己研鑽(けん・さん)の一環」としてボランティア活動に積極的に参加するよう呼びかける。市が作成したリストには、8月25日に開幕する世界陸上大阪大会の運営を手助けするボランティアもある。
 記者会見で処分を発表した関市長は「これほどの数とは予想しなかった。市民に深くおわび申し上げる」と陳謝。ただ、原因については「個人の問題。組織に詐称を許した原因があるとは思わない」との考えを示した。
 一方、滞納については金額が大きく、期間も長いなど悪質と判断され、給与の差し押さえ対象となった計15人が減給処分にされた。内訳は市税9人▽保育所保育料2人▽市営住宅家賃3人▽医療費1人。ほかに6カ月以上の滞納が確認された職員65人が戒告か文書訓告になり、うち27人は滞納分を完済しているという。

 部局別の数字が、何とも辛い。大学や短大で培った能力は、学歴詐称であるなら、仕事に生かすこともできず、 長く辛い日々を送っている方もいらっしゃるものと思う。自ら選択した<個人の問題>とはいえ、1000人規模ともなるとただ事ではない。