武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 《南イタリアの見聞》

 ○ナポリの見聞・・・噂ではナポリ市内の交通は最悪で、ここで運転できれば、世界中どこへ行っても運転できると言うらしい、とにかく、ちょっとした隙間があれば素早くクルマの頭が入り込んでくる、大きな交差点以外に信号が無く、阿吽の呼吸で車が走り人が横断する。路上では、神経の休まる暇がない。
 サンタルチア港、ヌォーヴォ城を見た後、カゼルタにあるブルボン家の王宮とその広大な庭園を観光。宮殿の部屋数がなんと1200、内部の装飾は贅沢の極み、庭園は広すぎて周回するにはバスで移動するしかない。なんという贅沢、なんという富の蕩尽。立派な図書館と、1200体の人形が密集するプレゼーピオが見物だった。
 バスの車窓から見たアマルフィ海岸の断崖絶壁が見事。究極のワインディングロード、バイクで走ったらさぞ気持ちいいに違いない。狭い海寄りの斜面に張り付くようにできたポジターノの街、斜面一杯に海岸からがけを這い上がる街並み、イタリア屈指のリゾートらしい。斜面から見下ろす地中海風景は絶景というしかない。

 ○カプリ島の見聞・・・船を乗り換えて<青の洞窟>を見に行った。ボートで狭い入り口から洞窟にもぐりこむと、なるほど海面が光の屈折の関係か澄み切った青色に輝いて揺れていた。息を呑むような幻想的な光景。リフトでソーラロ山へ登り下界を見下ろすとカプリ島を一望する眺望がひらける。(画像は、ボート1艘がやっとくぐれるくらいの穴から洞窟に入り、振り向いて青く輝く海面を見たところ、神秘的な青。)

 ○ポンペイ遺跡の見聞・・・ヴェスヴィオス火山の大噴火の際、火砕流流に襲われて火山灰の下に埋まっていた街。火山が意外に遠いので驚いた。よほど大規模な噴火だったに違いない。街並みを歩くと、さすがに2000年間時の歩みを停止した街、雨模様の天候だったせいか、不気味な空気が街並みを包む。街全体がそっくり化石になったような印象。2000年間、人々の暮らしは基本的には変らないことに何となく溜め息が出た。(画像は、突然のにわか雨に濡れたポンペイ遺跡のなかの街路、2000年前に舗道と車道の区別ができていたとは。石の住居が密集する都市が出来上がっていたことがわかる。)
 ○マテーラの見聞・・・石灰岩の斜面をくり抜いて住居をつくった洞窟都市。期待していなかった割には、ここの景観は感動ものだった。いくつかの洞窟都市を見たが、ここの重なり合う家並みの物凄いパノラマには言葉を奪われる。つくづく、人々はとんでもない所に住まうものだと感心する。昼食のレストランがその住居の一部を利用したものだったが、洞窟の奥行きが深いのにも驚いた。世界遺産の価値は十分にある。
 ○アルベロベッロの見聞・・・ここも世界遺産だが、白壁のトゥルッリに乗っかる石作りのとんがり帽子の屋根、ディズニーの小人の家を思い浮かべる旧市街、すっかり観光地化していてみやげ物屋がずらり。あちこちから、片言の日本語で呼びかけられるので、よほど日本人が沢山来るのだろう。新市街と旧市街を合わせて1000以上トゥルッリがあり、見事な景観、童話の世界のようで可愛らしい。
 観光で訪れた印象的なところをピックアップしてみた。北イタリアとの違いが余りにも大きい。未開発の自然と古代から人々が住み暮らす古い観光遺跡を、強烈な地中海の太陽光線が眩しく照りつける。現代もなお時の歩みがのろいような、全体がまどろんでいるような街並みが印象に残った。