武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 『ホワイト・プラネット』 カナダ・フランス合作映画 (監督: ティエリー・ラゴベール, ティエリー・ピアンタニダ)

 北極圏に生息する野生動物の生態を捉えたドキュメンタリー、どうやって撮影したのか想像できないようなアングルからの映像が、次々と出てきて眼を奪われた。82分という最近の長時間化する傾向の映画の中で、これで十分と、見るものを満足させ納得させる作品に仕上がってる。全編を通して、通奏低音のようにして流れるのは、過酷極まりない自然環境の中の厳しい生存のための闘争とそれでも画面からにじみ出てる生きることの喜びの姿だった。

 見ていて余りの厳しさにこちらの姿勢を正させられるような峻厳なシーンと、思わず子どもに見せたくなるような微笑ましいシーンが対比させられ、目が離せなかった。自然の音がすべてカットされていて、静かな音響が微かに流れているのも良かった。(画像は、この映画の中で主役級の活躍をみせるホッキョクグマのファミリー)
 amazonの内容紹介から、主なシーンを引用してみよう。

1:巣穴で生まれたての小さなコグマを大事そうに育てる親グマを映した奇跡の映像!
2:敵から子を守り水中で乳を与えるセイウチ
3:生まれて三週間で親から離れ大洋に泳ぎ出る子アザラシ
4:驚異の跳躍を見せるザトウクジラ
5:1000キロの危険な旅に挑む約50万頭のカリブーの大群
などなど多数の貴重映像満載

 3年にわたる長期撮影から生まれた作品らしいが、極めて貴重な映像であることは確か。地球温暖化の影響で、次々と崩壊し縮小してゆく氷河、薄くなった氷から必死に這い上がろうとするホッキョクグマなど、見終わってもいくつかの映像が眼に残り、しばらくちらついていた。
 休日など家族が揃ってのんびり過ごせる時間があるとき、みんなで部屋の明かりを少し落として静かに見るのがいいだろう。過酷な自然の中だからこそ、親子の動物が見せる育児の切なさが痛切な映像として迫ってくる。アザラシの水中の哺乳シーンなど息を止めて見てしまった。甘いだけではない1級のファミリー映画としてお薦めしたい。