武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 『おんがくぐーん』音楽の学校3・音楽の劇場3(発行ほるぷ出版)

 A面に入っているのは、音楽の学校とは言うものの、浪速屋辰造さんの浪曲「ねずみとねずみ小僧」。

 江戸の正月を舞台に、町中から一斉に消えてなくなった鏡餅の謎をめぐって、ねずみ小僧次郎吉が不思議なねずみの親子の物語に巻き込まれ、怪しい笛の音色に魅入られて、危く冬の海にねずみの大群と一緒に連れて行かれそうになるという、何とも伝奇的なストーリー。
 三味線とフルートの音色で味付けした、この国の伝統的な浪曲の語りが楽しめる。ジャケットのデザインは林静一氏の、これも奇妙な味わいのあるイラスト。子ども達に伝統芸能浪曲の語りを楽しんでもらおうとの企画だが、大人の方が懐かしい気がして喜んだのではないか。
 今では、浪曲を懐かしいと感じる大人がどれだけいるか、そんなことを考えると、この企画の時代性を痛感してしまう。

[音楽の学校3]
◎ねずみとねずみ小僧
 笛の音
 作=大西信行
 音楽=八村義夫
 浪曲=浪速屋辰造
 三味線=浪速屋りつ子・桃山てつ江
 ピッコロとフルート=野口龍

 B面は、これまでと同じ林光の作品集。

 1曲目は、3楽章構成のやさしいピアノソナタ、小学生のためにつくったピアノ曲とあるが、小学生の耳がどう受け止めるか分からないが、大人の耳で聞くと爽やかで美しい曲。
2曲目は2台のマリンバの二重奏、美しい小品。
 3曲目は、高名な台詞が一切ない映画「裸の島」の主題曲、厚みのあるオーケストラの音の層から浮かび出るテーマの印象的なメロディーが心地よい。この無言劇のような映画の成功の鍵は、林光の悲劇性を帯びたこの音楽にあると思うが、映像なしに曲だけ聴いても、気持ちが締め付けられるような感じを受ける。

[音楽の劇場3]
ソナチネ ピアノのために
 作=1956年
 ピアノ=本荘玲子
 *小学生のてめにつくったピアノ曲
◎二台のマリンバのためのコントラスツ
 作曲=1965年
 マリンバ=田村拓男・吉川雅夫
 *二人で弾くマリンバ
◎裸の島(映画「裸の島」主題曲)
 演奏=「音楽の劇場」交響楽団
 指揮=外山雄三