武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 『ナンプレ限界編』 堀内邦義著 発行廣済堂出版

 これまで何度か数独ナンプレについて言及してきたが、今回は超難問、1問解くのに四苦八苦すること必至のパズルブックのご紹介。
 この本は同じ出版社のナンプレシリーズ「傑作105選」の7冊目、最終巻にあたる位置づけのようだが、このシリーズは問題の難易度を18レベルに分けているから、何とも凄い。81マスに9個の数字をルールに従って入れるだけの簡単なパズルの難易度を、18段階に区分できると言うことが素晴らしいではありませんか。
 前にも指摘したが、ナンプレの難易度、実際に解いてみると確かに実感として、レベルが違うと難しさに違いがあることが分かり、なるほどと納得できるのだ。本編には、レベル11以上が掲載されている。
 さてどの程度難しいかと言うと、通常の数字を確定するやり方では、ほんの数個程度しかマス目が埋まらない。仮定法を使っても、数字を良く見て、作戦をたてて仮定法を使わないと、何時までたっても数字が決まらない。2段階、3段階の系統的な仮定法でしか、全部のマス目が埋まらないと言ったら、お分かりいただけるだろうか。
 本書をお薦めするのは、単に難しいからだけではない。それぞれの問題の姿形が、とても美しいのである。数字の配列が、意味ありげに並び、マス目を埋めてしまうのが勿体ないような図案になっている。単に難しい問題を作るだけなら、それほどではないかもしれないと思うが、数字の並び方を意味ありげにまとめ上げるという技術は、これは並大抵のことではない。
 書店で見かけたら、パラパラと何ページかめくってご覧いただきたい。面白い形のパズルがいくつも見つかるはず、私は、単なる難問集なら買わなかったのだが、数字の配列の美しさを見て、迂闊にも505円を投資する気にさせられてしまった。そして、1月以上たっても半分も解けない難しさに、とても満足している。
 1問なんとか解き終わるとやってくる、濃度の濃い達成感に、ささやかな喜びを味わっている。集中力と時間を浪費するので、多忙な人にはお薦めしない。ある程度無為な時間をお持ちの要するに暇な人向け、確実に消しゴムと無為な時間を消費することを請合います。