武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 2月第2週に手にした本(7〜13)

*情けないことに書庫にあることを忘れて同じ本を買ったり、読んだことすら忘れて図書館に予約を入れたりするようになってきた。読んだり読みかけたりした本を備忘録としてメモ、週1で更新しています。

◎礒山雅『バッハ・カンタータの森を歩む3ザクセン選帝侯家のための祝賀音楽/追悼音楽』(音楽之友社2009/2)*このシリーズも3冊目、礒山氏の平明で克明な解説と、バッハ・コンチェルティーノ大阪の付録CDが気に入って、付き合って3冊目になる。バッハのカンタータの勉強として、愉しみながら読みかつ聴いている。世俗カンタータの楽しみ方を教わった。
スーザン・ジョージ著『オルター・グローバリゼーション宣言』(作品社2004/8)*圧倒的に無慈悲な形で進行するグローバリゼーションについての理解と、市民レベルでの抵抗運動について知りたくて本書を手にした。実証的な現状分析の鋭さで以前から目が話せない問題提起者。
倉田卓次続々裁判官の書斎』(勁草書房1992/1)*裁判官の書斎シリーズの3冊目、前半に置かれている読書随筆、書評がお目当て、私と教養の範囲とレベルが違うので、読み進むうちに目からウロコが何枚も剥がれ落ちて視界が拡がる。この本には、これまでのシリーズになかった対談が2本掲載されており、よりご本人の実像に近寄りやすくなった。
高月靖南極1号伝説』(バジリコ(株)2008/4)*人形愛に応えるべく仕事として取り組んでおられる会社への取材を柱に、ラヴドールの戦後史をまとめた力作ルポ。リアルな人形の画像を参照しながら読むと説得力がある、実物を見てみたくなった。
◎編集工学研究所著/松岡正剛監修『情報の歴史―象形文字から人工知能まで増補版』(NTT出版(1996/04)*世界史年表を一度解体して、その時代のトピックを軸に再編成した、何とも愉しい画期的な人類史年表、時間があるときにボッとしながらどこか神経を鋭敏にしてページをめくると愉しい発見が相次いで出来そう。高値で取引されているので、そろそろ改訂版を期待している。
◎斉藤隆介著『斉藤隆介童話集』(ハルキ文庫2006/11)*斉藤隆介の童話は、絵本になっているものが多い。本書のようなテクストだけで(少し挿絵もあるが)読むと、方言を生かしたリズミカルな文体の魅力が際立つ。文字を追って行くと、どんな早さで音読すればいいか、自然に手探りしている。省略を効かせて、物語の原型だけを彫り出したような素朴な味わいを愉しんだ。
斉藤美奈子それってどうなの主義』(白水社2007/1)*軽薄に惰性的に流れる世相風潮に、冷や水よりも厳しい氷水をぶっかけるのを得意とする斉藤美奈子こそ、批評家の名に値する。本書では、とりわけその資質が輝いている。拠って立つところは、真っ当な常識なので、常識外れに流される世相が如何に酷いかの証明にもなっている。痛快な読み物である。
沼正三著『集成「ある夢想家の手帖から」上・下』(太田出版1998/5)*稀覯本「ある夢想家の手帖から」全6巻からの抜粋、家畜人ヤプーの原作者が本書の著者、読んでみると確かに、ヤプーの作者が本書の作者であることは、直感的に疑いようがない感じを受けた。本書は、驚異の奇書ヤプーに平行する、高踏的マゾヒズム人生論の随想集とでも言うべき、もう一つの奇書、著者の立脚する視座が意外に堅牢強固であることに感心した。ここからヤプーの大作が誕生したことが納得できた。
松岡正剛著『遊学Ⅰ・Ⅱ 』(中公文庫2003/9)*142人の古今東西の知的巨人達について、あくまでも松岡正剛の私的な座標を軸にして、思うままに語り尽くした人物譜。これだけの幅広い分野の超一流人について、私的に何事かを語ることが出来ると言うこと自体が凄い。現代の百科全書的人間とでも言いたくなる。