武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 6月第2週に手にした本(10〜16)

*先週は空梅雨の空模様を嘆いていたが、今週はどんよりとした曇り空と、しとしと降り続く雨模様が鬱陶しい。天候から受けるこちらの気分もお天気しだい気まぐれなもの。気温が上がってきて、早朝散歩の時刻が少し遅れると、その蒸し暑いこと、起床時刻をさらに早めようかと思っている。

天野忠著『詩集/古い動物』(れんが書房新社1983/6)*古い動物というのは、年老い暗喩自分を自嘲的に表現した老人のらしい。京都に暮らしたこの著者の詩にはいわゆる<いけず>の精神が横溢していて愉しい。意地悪爺さんの捨て台詞が、芸のレベルにまで高められており、詩の香りが満ちているのが凄い。老人版ライト・ヴァース

岩本久則著『岩本流野鳥観察手帳』(徳間文庫1987/5)*くだけた感じの親しみやすい文体と著者自らのイラストが愉しいバードウォッチング入門書。鳥の気持ちに寄り添うようにして書かれた記述と、豊富なエピソードをちりばめた展開も愉しい。私的には、鳥に関する雑学をたくさん拾えて収穫の多い本だった。

吉村昭著『三陸海岸津波』(文春文庫2004/3)*明治29年昭和8年昭和35年三陸海岸を襲った3度の大津波を丹念に取材した地理的歴史的旅行記。3/11の記憶も生々しい今読むと、東北地方の太平洋側一帯は、繰り返し津波の襲来を受け続けた、津波ベルト地帯であることが痛切に理解できる。あの一帯の海岸沿いに原子力関連施設を作ることの無謀に慄然とする。明日にでも、次の津波がこないとも限らない、その時に福島第1原発はどうなるのだろうか、想像するだに恐ろしい。

◎エレン・ラペル・シェル著/栗木さつき訳『太りゆく人類/肥満遺伝子と過食社会』(早川書房2003/8)*現代社会の緊急課題とも言うべき肥満について、多様な角度から取材した肥満についての薀蓄本。肥満は美容や成人病予防の視点からだけでなく、文化史的な角度から悪徳のシンボルとして扱われてきたことなど、嫌悪される多くの理由がありながら、克服が困難な症候であることがよくわかった。この点に研究者や企業の関心が集中していることもリアルに了解された。先進国には先進国の、新興国には新興国の肥満事情がある事実が、なんともかなしい。