武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 新たな生活空間の構築(17)


アシナガバチとの共生》

私が生まれ育った田舎では
動物が自宅に営巣することを歓迎する風習があった。
例えばツバメが軒下などに巣を作りに来ると
今年もこの家は大きな災害を免れると喜び
ツバメたちの子育てを大事に見守った。


子ども心に不思議に思い訳を聞くと大人たちは
彼らは動物特有の鋭い感覚で
不幸に見舞われるような家を本能的に避けるのだと
教えてくれて奇妙に納得した。


さて、我が山荘にも5月頃から
アシナガバチが巣作りをはじめた。
日常的に出入りに使う玄関の巣は
こちらの生活に支障をきたすので
申し訳ないが撤去させてもらった。


すると、今度は北側の勝手口の軒下に一つと
南側のあまり使わない出入り口の軒下に一つ
いつの間にか巣作りしているのを見つけたが
そのまま撤去しないで見守ることにした。
(上の画像は南側の、下の画像は北側の、いずれも軒下のアシナガの巣、山荘の小さな用心棒たち)


ネットで調べたところキアシナガバチという種類のようだ。
アシナガバチの種類の中では攻撃性が強いとあるが
いたって大人しく覗いて見ていても巣作りに忙しいらしく
チラリとこちらを見る固体もあるが
威嚇する様子もまったくない。


ほかに軒下はたくさんあるのに
玄関などの人が出入りするところにばかり巣を作るのは
天敵から巣を守るハチの戦略なのかもしれない。
そう考えると、玄関先で睨みをきかせる小さな用心棒のようで
なんとなく親しみがわいてくる。


活動の様子を見ていると
日中の高温になる時間帯には
飛行回数も多くなり活発に動いているが
朝晩の肌寒い時間帯には巣をとりまいてじっとしている。


今盛んに活動している働きバチのオスは
冬になるとすべて死んでしまい
越冬できるのは女王バチだけらしい。
儚いオスの命を思うといっそう愛着がわいてくるではないか。


オスが収穫してくる餌は蝶や蛾の幼虫であり
アシナガバチ益虫という指摘もある。
山育ちの友人の一人は、
アシナガバチスズメバチは棲み分けて巣を作るので
アシナガバチの巣があるところには
スズメバチは巣を作らないとも言っている。


虫嫌いの訪問客には内緒だが
日を重ねるに従って
アシナガバチに親しみがわいてきた。
不幸を遠ざけるお守りの一つとして
これからもそっと近くで営巣のようすを
観察させてもらうつもりである。