武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 反戦平和を離れて純粋に絵だけを見ても「丸木美術館」は飛びっきり素晴らしいユニークなお勧め美術館 大作の圧倒的な迫力はピカソの「ゲルニカ」を凌ぐほど とにかく実物を見てほしい。(画像は原爆の図シリーズの一点のわずかな一場面)

toumeioj32005-08-01

 本日の朝日新聞の社会面に、丸木美術館が存続の危機に到っているとの記事がでていた。改めて、今の時代の風潮が、丸木夫妻が願った反核平和の理想から、遠く隔たってしまっていることをつくづく実感した。
 以前にいった時の記憶をもとにしてしてだが、美術館の印象を思い出してみよう。場所は、関越自動車道東松山で降りて、小川方面に10分ほど走ったところ。道路に道しるべの看板があるので迷わずにたどり着けた。車が何台もおける大きな駐車場があった。
 丸木ご夫妻の美術館ということで小さい建物をイメージしていたら、鉄筋コンクリート3階建てほどの予想外に立派な美術館だったのに驚いた。10年ほど以前に行った記憶だが、その頃も入館者の数は多くなかった。静かで落ち着いてゆったり見られて、得した気分になったことを覚えている。
 教科書や原爆関連のいろいろな本で見ていたので、可なりの絵は初めてという気がしなかった。しかし、思っていた以上の大作で、作品によっては強烈なタッチ、大胆な構図、思わず息を呑むほどの圧倒的な迫力に、想像以上のショックを与えられた。チマチマとした可愛い傾向の絵が増えてきている中で、丸木夫妻が描く原爆の絵は破壊的なほどの迫力を持っている。丸木位里さんの原爆体験が元になった作品だが、体験を遥かに越えた広がりと、真摯に掘り下げられた原爆の意味の追求により、目を見張るばかりの芸術性を獲得していると思った。
 館内には、原爆の図、14部が展示されており、原爆の図以外に、アウシュビッツ水俣など、人間の悲劇に取材した圧倒的な作品も展示されていて、見終わるとどっと疲れが出てきたことを覚えている。いい美術館は、疲れる。疲れない美術館は、いい美術館といえない。(独断と偏見か)
 私の考えでは、テーマは確かに原爆だが、風化しかかっている原爆に引きつけて見る必要は余りないような気がする。何と言おうと、作品そのものが凄い力を持っているのだ。圧倒的な表出、この国にもこんなスケールの大きな絵を描く人がいたということを知るだけでも、丸木美術館を訪問する価値はあると思う。
 WEBサイトhttp://www.aya.or.jp/~marukimsn/に行くと、当美術館の概要が分かります。行って見てくるだけでも丸木美術館を存続させる一助になると思う。それ以上の支援は、あなたの志次第です。