武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 この国の労働市場の歪み(あるニュースに触発されて)

toumeioj32006-07-31

 この国が次第に格差社会化していることについては、何度も書いてきたが、何度書いても気持ちが晴れることはなく、益々暗くなるばかり。毎日新聞のサイトで見つけた小さな記事が気になったので、まず、そっくり引用しよう。

相対的貧困と幸福感
【PJニュース 07月30日】− 経済協力開発機構OECD)の日本報告は、全六章のうち一章を格差問題に当て、初めて本格的に論じている。論議の中心点は相対的貧困率であるが、それは生産年齢人口の可処分所得を比較し、中央値の半分以下の所得人口の割合を算出した数値である。

 同報告書によると、日本の所得格差は拡大し、相対的貧困率は2000年にはOECD加盟国中、アメリカ(13.7%)に次いで第二位の13.5%に上昇している。その原因は労働市場のおける正規労働と非正規労働の二極化が拡大・固定化したことであるとしている。これについて、OECD労働市場の二極化の是正と正規雇用の増加への取り組みを求めている。

 関連事項を検索中、28日付ロイター電の「世界で一番幸せな国はデンマーク=調査」という記事が目を引いた。これは英国レスター大学のホワイト教授が世界178カ国からデータを収集し、満足度(医療制度、裕福度、教育)を調査。世界一幸せな国はデンマーク、その後にスイス、オーストリアと続く。米国は23位、日本は90位であるという。【了】

 この国相対的貧困率は、OECD加盟国中第2位。ある調査の生活満足度調査結果は、90位。何ということだろう。この国の底辺層でひっそりと進行している所得崩壊の実情には、恐るべき実態が潜んでいる。記事が指摘しているように、労働市場の歪みが、その第一原因であることは間違いないだろう。
 正規雇用と非正規雇用、そして、非正規雇用の内部で進行しているさらなる不法非正規雇用。企業の生産点、物づくりの先端でこそいかなる商品も製造される以外ないのだが、価値の増殖が、この生産点を忘れてサービス業などに重点を移したと見られているせいで、現場の生産労働に携わる労働現場で、悲惨な労働実体が蔓延していることに、あまり関心が集まらなくなっている。
 かつての炭鉱労働の坑道の先端で生じた悲惨な労働実態と多発した事故のように、今、企業の生産点で、工場の高い塀と厚い壁の向うの企業秘密の坑道の奥のようなところで、何が進行しているのだろうか。想像してみて欲しい。社会の利潤を生み出す本当の出発点は、常にそこにあるのだ。その部分で、密やかに奴隷労働としか言いようのない偽装請負労働が進行していることを。
 年収200万円下回る非正規雇用の身分で、家庭を築き子供を育てる将来設計が、どうやって描けるだろうか。ペットの飼育条件が、子孫を生み育てる前提条件を満たせない場合、動物虐待にあたるという基準に従えば、これは、人間に対する虐待行為というべきだろう。ペットが何も言わないように、何もいえない境遇に置かれている不法非正規労働者の問題を、マスコミはもっと力を入れて追求してもらいたい。
 若者が未来を展望できないということは、若者に対する虐待行為を、社会が黙認している言うことだ。社会が黙認したことは、いずれ必ずその社会の負債として跳ね返ってくるにちがいない。
 若者が意欲的に希望に満ちて働けるような労働環境がなけれが、決してその社会は発展しない。金持ちが金を持っているというそれだけの理由で優遇されるような社会は、きっとどこかおかしい。