武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

『子すずめペチャのアイウエオ日記(わたしの動物記7) 』 槙原万希子著 (ポプラ社 1986/01)


 もう1冊、スズメを赤裸のヒナから成鳥に育ててリリースするまでを書いた本を見つけた。育っていく途中で、『ワンワン』『アイウエオ』などと鳴くようになる生育のエピソードがとても可愛く書かれていて、子ども向けの本ながら、大人がが読んでも楽しめる内容になっている。
 ある日買い物に行く途中で出会った小学生から、スズメのヒナをもらい受けた著者の、必死の飼育のかいあって、無事に幼いヒナが育って行く過程は、ドキドキはらはら、やがてホッと安堵させられてほほえましい。
 やがて、羽が生えそろい、歩くことから飛ぶことへの成長の階段をとんとん拍子に進み、著者の家庭の一員としてさらに成長して行く。
 途中から、記述の仕方が、日記スタイルに変わり、成長の過程を綴った記録のようになるところもある。成長するにつれて、野生のスズメとの交流も進み、やがて自然に帰って行くことにも成功するようになる。奇跡のようなハッピーエンドなので読後感はとてもいい。
 この飼育記のユニークなところは、部屋を開放しておいて、自然界に帰っていったスズメが育てたひな鳥を連れて里帰りしたりする場面があるところ。野生がこのような形で、人間と交流できたことは、非常に珍しい。
 現在の自然保護や野鳥保護の観点からすれば、いくつもの問題点を指摘できようが、その点を承知の上で、スズメ好きの大人が読めば、珍しい野鳥飼育記として楽しめる気がする。ただし、人間とスズメとの長い歴史の中で、何故、スズメがペットとして愛玩されてこなかったか、相当の理由があることとと思うので、愛らしくも珍しい話として楽しむだけにしておきたい。