武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 『山下洋輔スペシャル・ビッグバンド コンサート 2010』in所沢、所沢市民文化センター ミューズ アークホールでの印象記


昨夜、自宅から歩いて市内の市民文化センターへ山下洋輔を聴きに行き、歩いて帰ってきた。リーダー山下洋輔ほか16人の豪華メンバーによるビッグバンドジャズ。
どの楽器も1台で充分に大ホールに響く能力があるのに、左右に大型のスピーカーセットを配置して音をピックアップしてあり、演奏が始まると共にホール全体が音響の大洪水、前から3列目のピアノのすぐ近くの席だったので、鼓膜に音が圧力となって押し寄せてくる始末、この夜はまず物理的に圧倒された、文句なし、我が家のオーディオセットだったらとっくに壊れていた。メンバーを引用しておこう。 (この画像で言うと、左のピアノのすぐ下の位置あたりが、私の席だった)

山下洋輔スペシャル・ビッグバンド(16名編成)
リズムセクション山下洋輔 (Piano)/金子健(Bass)/高橋信之介(Drums)
・トランペットセクション/エリック宮城(tp)/佐々木 史郎(tp)/木幡光邦(tp)/高瀬龍一(tp)
トロンボーンセクション/松本治(tb)/中川英二郎(tb)/片岡雄三(tb)/山城純子(B,tb)
サキソフォンセクション/池田篤(As)/米田裕也(As,cl)/川島哲郎(Ts,fl)/竹野昌邦(Ts,fl)/小池修(Bs)

前半は、①「Rockin' in Rhythm」②「All the things you are」③「チュニジア風イントロつきの『The Night in Tunisia』」④筒井康隆評する「脱臼した『Bolero』」。熱狂と脱力が目まぐるしく交差するボレロは、まるで大規模な音響の間欠泉、火傷しそうにホットなハイトーンが次々とホール全体に噴出する。
後半は、⑤「First Bridge」⑥「Memory is a Funny Thing」⑦「幻燈辻馬車」⑧「Rhapsody in Blue」⑨アンコール「スウィングしなけりゃ意味ないね」。「幻燈辻馬車」は原作の山田風太郎も映画化の指揮を取るはずだった岡本喜八も亡くなって頓挫している映画の主題歌、明治の街並みから満天の星の夜空へ疾駆する二輪馬車の音響が、まるで花火大会みたいだった。
ボレロラプソディ・イン・ブルーも、クラシックの演奏に慣れた人なら腰を抜かしてしまいそうな程、演奏者がやってみたいと思っていたことを、縦横無尽にやりたい放題やってしまったと言う感じの、音響的絶頂の連続攻撃、いやはや参りました。ラベルもガーシュインもあの世で吃驚したことだろう。
この日がツアーの最終日だそうで、メンバー全員が最後に、やりたいことをやり終えたという開放感溢れる表情で舞台を去っていったのが印象に残った。お疲れ様でした。