武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 『言海』を入手して


ネットで検索していてオークションで偶然に「言海」が売りに出ているのを見つけ、運良く吃驚するような安値で入手できたので、ぺらぺらページをめくったりして愉しんでいる。
言海」はよく知られているように、「明治に大槻文彦が編纂した国語辞典、日本初の近代的国語辞典とされ」ている超のつく古本、読める辞典として開高健などの作家にファンが多かったことでも知られている。この国の近代国語学の輝かしい金字塔と言って過言ではない。
Wikipediaで調べると、「最初は四六倍判の四分冊として出版され、その後一冊本や上下に分かれた二冊本、判型が異なった小型や中型のものが刊行されていった。大槻の没後に、大幅に改訂がなされた『大言海』も発刊された。」と出ている。
私が入手したのは、奥付を見ると明治37年2月25日に第1版が発行された縮刷版文庫サイズの<小型言海>と呼ばれているものの、大正13年4月5日発行の復興改版版である。今から80年以上前のものだが、本自体は古いが割りとしっかりしている。第513版とあるので、当時はよほど人気のあった国語辞典だったのだろう。
非常に字が小さいので、虫眼鏡で拡大しながら適当にページをめくっていると、例えば
うみてふてふ [名] 海蝶 とびうをニ同ジ  
とでている。ネットでチェックしてみても、すっかり忘れられたボキャブラリーのよう、昔はトビウオのことを海蝶と言ったこともあるのかなどと空想を広げたりして、何だか嬉しくなってしまった。
動植物などの名詞の説明を辿ると、まるでミニエッセイのような味わいがあり、隠れた著者の文体が見え隠れして愉しい。この辞典が<読める>辞典と言われる所以だろう。この辞書は、精神的にも生活面でも時間があれば適当なページを読んで、世間離れのした楽しい空想の時間を過ごすツールになりそうな気がして、気に入っている。ちくま文庫から復刻版が出ているので、興味のある方はどうぞ。