武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 『植物記』埴沙萌/(はにしゃぼう)著(発行福音館)

toumeioj32005-08-17

 楽しく植物の世界とお付き合いするためのヒント満載の写真集、草花のいろいろな生態を鮮明に捉えた傑作アルバム。
 この本は、とにかく写真が鮮明で美しい。しかも、撮影者の意図がはっきりしていて、見開き2ページにまとめてあるレイアウトにも遊び心が横溢、植物と心行くまで遊び戯れたような心境にしてくれる。93年4月発行の10年以上まえの本だが、何時見ても飽きない。
 構成は、全体が12ヶ月に分けられており、4月から3月まで、月別に毎日の日付ごとの写真日記風のページに続いて、見開き主体のページが10数ページテーマごとに写真をまとめてあり、植物観察の楽しい視点を提供してくれる。草花をこうゆう風に見ると楽しいよ、といった著者からのメッセージが溢れている。子ども向けの変り種図鑑として出版されたようだが、子ども達に独占させておくのは勿体ない。図鑑好きの子どもはもとより、植物好きの大人にも十分楽しめる写真集。
 植物の季節感は、年によっても地域によってもかなり違いがあるので、著者はあとがきで、はっきりと取材地域を「大分県野津町と国東半島」と断っている。関東地方の住む私と、季節的にそんなに違和感を感じたことはないが、モデルの植物達の非常に生き生きとしている様子から、環境がいいのだろうなといううらやましいような感想がわいてくる。
 この本は大型で22.5×30.5cmと大きく、ズシリと重いので、リュックにいれて持ち歩くという訳にはゆかない。机の上や膝の上で広げて、改めて草花の楽しさ面白さに思いを致すのに向いている。忙しくて年中草花と付き合っていられない植物好き、雨が降って植物を眺めに出かけられずくさくさしている時、手にとって見られることをお薦めする。なお、著者の埴沙萌さんのサイトがhttp://www.tg.rim.or.jp/~hany/なのでお訪ねになってはいかが。ここにも素敵な写真がいっぱいあります。