武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 上山温泉の銘菓、利久堂のかりん糖


 余り沢山の人に知られて、伊勢の赤福のようになっても困るが、山形県は上山温泉のお菓子、利久堂のかりん糖を知り合いの方から頂戴した。以前にお宅に伺った折に、お茶うけに出されて、あまりの美味しさに感嘆の声を上げてしまい、そんなことから今回おみやげに頂いたという次第。これは嬉しい。
 もともと甘い物には目がなく、庶民の味とでも言うべき花林糖は好物だったが、この<かりん糖>には目を瞠った。普通に売られているものの倍ほどの大きさで、表面の照り艶が滑らかで、どことなく色っぽい。手に取った時の質感が、指先にしっとりした重みとなって伝わって来る。
 味は、香ばしさを伴った丸みのある甘さ、糖衣状のお菓子なのに甘さはひかえめなのが面白い。噛むとかりっとした歯ごたえで、程良く揚がった下の生地がくだけて、口の中に小麦と砂糖が程良く混ざった香ばしい甘みが拡がる。意識して顎に力をいれるほどに堅くはなく、わざと膨らませたような空洞のサクサクした感じでもでもなく、噛み心地もちょうどほどよい。
 食べ始めると、一個だけではすまなくて、次々と二個目三個目に手が伸びる、所謂癖になる味、これはイケナイと思いつつ、ついつい手が出てしまう。話を聞くと、現地でも評判で、作った分はその日のうちに売れてしまうことが多く、入手し難いこともあるそう。そんな話を聞くと、どことなく素朴な手作り風の形をしていることも、有り難いような気がしてくる。
 一度味わったら忘れられない、形と味の<かりん糖>である。当地に行かれた際には、是非一度味わってみて頂きたい。花林糖にも名品はあるのだという話。