武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 『[図解]さかな料理指南』 本山賢司著 (新潮文庫)

 本書の最大の特徴は、写真が全く使われていないこと。図解とは、イラストによる分かりやすい絵解きと言う意味、著者自身によるイラストと文章がうまく組み合わさり、これまで読んだどんな料理本よりも分かりやすい、というか、手順がイメージしやすい。

 味の決め手は調味料の分量配分にあると思うが、この本では分量の指定が一切ない、ドンと材料の種類を指示してあるだけ。逆に言えば、細かく調味料の配合を指示するまでもない料理がほとんど、これも本書の特徴のひとつ。
 著者の料理好きが次第に高じて、趣味となり、やがて趣味の領域からもはみ出して、本書を出版するまでになった過程の話が、随所に出てきて面白い。簡単に言えば、美味しいお酒が呑みたくて、美味しいツマミが欲しくなり、安くて美味しい肴を求めて試行錯誤するうちに、自分で作るようになったと言う話か。著者が経験したエピソードが楽しい。チョットやってみようかなと言う気にさせられる。
 本格的な料理書として読むよりも、イラスト入りの変り種の料理エッセイ集として読むほうが楽しい本。分かりやすいので、魚料理は初めてという方にお勧め。
 目次を引用しておこう。

まず、うまい魚を手に入れる―買い出しと店選びのコツ
いざ、魚をさばく―三枚おろしと大名おろし
おすすめの簡単料理―焼き魚・自家製の開き・煮魚
作ってみよう、簡単レシピ
おなじみの魚でも一味ちがう技
地魚・変わり者に挑戦してみる