武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 『ジャズ100年史』 ロイ・カー著 広瀬真之訳 (発行シンコーミュージック)

 音楽の楽しみ方には、聴く楽しみのほかに、見る楽しみ、読む楽しみなどがあって、聴く以外の楽しみ方が音楽の楽しみ方の幅を広げてくれる。コンサートを生で楽しむほうが、CDを聴いているよりもはるかに楽しいのは、聴く以外の要素が興趣を盛り上げるから。


 子どもの頃から、いろいろな機会を通してジャズを楽しんできたが、60年代あたりから、若者の生き方を模索するスタイルにジャズが影響するようになった時代もあった。ジャズが好きだということは、その人の生き方を特色づけるひとつの要素とされた時代があった。楽しむよりも苦悩を表現する重苦しい音の流れにジャズがなっていた時代もあった。
 ふんだんにイラストと写真をあしらったジャズ史のこの本を眺めていると、古いアルバムをめくる時のような懐古的な気分が湧き上がってくる。今の若い人には分からないかもしれないが、ジャズが時代のファッションだったこともあったあったのだ。どんなに斬新なサウンドも、より新しいものによって、次々と古びたものにされてゆく。その移り変わりが、手に取るようにわかる。ほとんどのページがイラストと写真で埋めつくされていて、読むよりも眺める本、視覚から入ってくる情報量が圧倒的に多いので、説得力は相当のもの。ジャズ好きにとっては堪らない一冊になるころだろう。
 この本を眺めていると、聴きあきてしまい何年もしまいこんだままのLPやCDの埃を払って、手に取り直す気になってくるという功徳があった。古いジャズファンには是非お勧めしたい一冊。
 内容紹介をかねて目次を引用しておこう。この国の一般的なジャズ史と少し違うところが面白い。

Way Down Yonder In New Orleans [1897〜1920](ニューオーリンズの彼方に)
The Windy City …and tlle Big Apple[1920〜35](風の街とビッグ・アップル)
Call Me Mr Big[1935〜44](Mr.BIGと呼んでくれ)
The Be Bop Revolution[1944〜50](ビバップ革命)
Jazz At The Phil[1940〜60](ジャズ・アット・ザ・フィルハーモニック)
The Cool On The Coast[1950〜55](西海岸のクール)
The Harder They Come[1955〜60](ハードな奴らがやって来る)
So Far Soho[1947〜60](ソーホーから遠く離れて)
Hhe New Thing(新しきもの)
Jazz On The Juke Box[1960〜62](ジュークボックスのジャズ)
The Blues Brothers [1955〜65](ブルース・ブラザーズ
Jazz Plugs ln [1967〜80](電化するジャズ)
The Young Lions[1980〜90](若き獅子達)

Future Funk − Acid Jazz([1990〜97]フューチヤー・フアンク−アシッド・ジャズ
Still Blue After All‐These Vears(ブルースは死なず)
Jszz Festivals(ジャズ・フェスティバル)
Out of Africa (アフリカ発、世界ヘ)
Satcllmo(サッチモ
Boxing Clever (全集モノの功績)
Western Sing(ウェスタン・スウィング)
Jazz Movies(ジャズ映画)