武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 『阿久悠自選詞集』 阿久悠著 (グラフ社)

 図書館から借りてきた「阿久悠自選詞集」をめくりながら、昨晩、NHK BS2で「BSまるごと大全集 作詞家・阿久悠の世界〜時代を作り 時代をつむいだ歌」を見た。どのチャンネルを選んでもオリンピック番組ばかりだったので、あえて4時間にも及ぶ長時間番組に気を散らしながら付き合った。
 阿久悠の職業は、詩人・作詞家・小説家などとあるが、特定の職業の枠にには到底収まりきれない多彩でマルチな天才だったことを、改めて再認識した。私の実感としては、<昭和という時代の悪友>だったと、括ってみたい。<悪友>は<阿久悠>というペンネームの語源として有名だが、実にいいペンネームを選んだと感心する。さすがである。
 <親友>も人生のお伴としては大変に結構な存在には違いないが、見方を変えてみると、どれだけたくさんの<悪友>に恵まれるかも、その人の人生の豊かさの指標になるような気がしているが、どうだろう。人目を憚るような悪い遊び、悪い企み、悪い小遣い稼ぎ、悪い隠し事などなど、<悪友>が絡むチョットした罪のない悪事は、人生のささやかな香辛料として、なかなか悪くない彩りとなるのではないだろうか。そういう意味で、私は阿久悠という人は、つくづく<昭和という時代の悪友>だったという気がしてならない。
 とりわけ、歌を通してメディアを方向付けてゆく才能は素晴らしく、作詞家阿久悠は、昭和という時代の偉大なディレクターの役割を果たした人だった。時代の変化と匂いをいち早く感じ取り、これから行く方向性を、歌詞をとおして暗示するという、詩人が本来果たすことを期待される仕事を、何とも華やかにこなし続けた人。「阿久悠自選詞集」をめくりながら、そんなことを取りとめもなく考えさせられた。
 阿久悠の仕事をまとめて閲覧したい人は、Wikipediaの以下のサイトを見てほしい。膨大な内容をよくまとめている。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%98%BF%E4%B9%85%E6%82%A0
 また、オフィシャルホームページ「あんでぱんだん」も情報量が多く、とても参考になる。
http://www.aqqq.co.jp/
 最後に、本書の目次を引用しておこう。7章によって構成された自選詞集なので、目次の構成を眺めるのもなかなかに面白い。

第1章 男がピカピカのキザでいられた
 第1章・序
カサブランカ・ダンディ/酒場でDABADA
麗人/サムライ/闘牛士/赤道直下
ジャガー/君よ抱かれて熱くなれ
女になって出直せよ/トマトジュースで追いかえすのかい
勝干にしやがれ/探偵(悲しきチェイサー)
DJが眠ったあとで/ダーリング
気絶するほど悩ましい/ワインカラーのときめき
あなたに今夜はワインをふりかけ/OH! ギャル
時の過ぎゆくままに/立ちどまるなふりむくな
LOVE(抱きしめたい)/さよならをいう気もない
憎みきれないろくでなし/真夏の夜の夢
十年ロマンス/色つきの女でいてくれよ/GIVE UP

第2章 何故鴎が翔ぶのだろう
 第2章・序    
舟唄/本牧メルヘン/白いサンゴ礁津軽海峡冬景色
おもいで岬/我が心の港町
鴎という名の酒場/珊瑚礁に何を見た
ざんげの値打ちもない/棄てるものがあるうちはいい
とても不幸な朝が来た/この愛に生きて
京都から博多まで/大人のつきあい
冬の旅/日本海/なつかしの港町/北の盛り場
昭和放浪記/北の宿から/雨の慕情/水中花
男と女・昭和編/夢ん中/涙きらり/世迷い言
夢追いびとよ/恋幻燈/甘ったれ/東京物語
嫁に来ないか/契り

第3章 青春は35ミリ白黒スタンダード
 第3章・序      
ジョニイヘの伝言/五番街のマリーヘ
学生街の四季/湘南哀歌/黄昏のピアノ/さらば友よ
二日酔い/街の灯り/目覚めた時には晴れていた/マリーこれが涙だ
人間はひとりの方がいい/魚/青春時代/下宿屋
コーヒーショップで/乳母車/過ぎてしまえば/お茶の水エレジー
今ふたたびポニーテールを

第4章 ディズニーとスピルバーグに挑戦してみないか
 第4章・序
UFO/ウオンテッド(指名手配)
サウスポー/ヤマトより愛をこめて
宇宙戦艦ヤマト/白い蝶のサンバ
カルメンヴ‘77/狂わせたいの/きりきり舞い/狙いうち
どうにもとまらない/じんじんさせて/絹の靴下/個人授業
恋のダイヤル6700/ペッパー警部/S・O・S/渚のシンドマッド
波乗りパイレーツ/マンデー・モナリサ・クラブ
股旅‘787/林檎殺人事件/ピンポンパン体操

第5章 青春期 恋夏期 思秋期 感冬期
 第5章・序
思秋期/熱帯魚/ロマンス/センチメンタル
シンデレラ・ハネムーン/ひまわり娘
ドリーム/若草の髪かざり/きみ可愛いね/狼なんか怖くない
第二章・くちづけ/二重唱(デュエット)
木枯らしの二人/みかん/青い鳥逃げても/悲恋白書
みずいろの手紙/乙女のワルツ/せんせい/わたしの青い鳥
二十才前/想い出の樹の下で/いい娘に逢ったらドキッ

第6章 誰にも怨みをいわない さよならの風景
 第6章・序
また逢う日まで/カントリー・ドリーマー
夏のあらし/踊り子/愛しつづけるボレロたそがれマイ・ラブ
かなしみ模様/九時からのリリィ/愛は心のフルコース/送春曲 
天使になれない/冬物語愛する人はひとり/酔いどれかぐや姫
朝まで待てない/もしもピアノが弾けたなら

第7章 地球の丸さを知る若者の詩
 第7章・序      
若き獅子たち/地平を駈ける獅子を見た
君よ八月に熱くなれ/ふりむくな君は美しい
ミュンヒェンヘの道/地球の丸さを知る子供たち
鳥の詩/昨日、今日、明日/あの鐘を鴫らすのはあなた