武蔵野日和下駄

10歳から続く乱読人生、年季の入った活字中毒、頭の記録メディアがダウン寸前、記憶のダイエット装置

 『詩人の墓』 谷川俊太郎詩・太田大八絵 (発行集英社)

 半年前に出たばかりの谷川俊太郎さんの最新詩集、と言うよりも、太田大八さんとの詩の絵本というべきか。ちょっとクレーに似た優しい感じのする水彩主体の抽象画に、四行の詩を配置、全体で詩人の生涯を物語ることになる長編詩。

 いつものように分かり易い言葉で、鮮明にイメージが紡がれてゆくが、透明感のある言葉のむこうには、すっきりと何もなくて、読後、何とも言えない悲しみのようなものがしんみりと残る素晴らしい作品。
 娘と暮らすようになって、詩人の悲劇が始まるところが、何とも悲しい。次の娘の叫びが、この詩集のクライマックスか。二人の愛の芳醇と衰退がくっきり対比され、通俗的だが説得力がある。
「何か言って詩じゃないことを
 なんでもいいから私に言って!」
 そして、この詩集の最後のページは、アクセントの強い絵があるけれど、それまでどのページにもあった4行の詩が書かれていないので、ドキッとする。詩によって書かれた、詩の墓とでも言うべきか、私にはこのページは痛烈な最後の行間、後ろへ限りなく続く無の行間のような気がした。レイアウトの妙。
 「詩人の墓」というフレーズが気に入ったので、ネットを検索してみたら、面白いもの見つけたので、付け足して置こう。蛇足。
「文芸ジャンキー・パラダイス」という大変に楽しいサイト。「映画、文学、音楽、マンガ、絵画等あらゆる芸術ジャンル」をターゲットにした遊び心満点のサイト、是非に訪問してみて。アドレスは、
http://kajipon.sakura.ne.jp/index.htm
そして、このサイトにあるコンテンツの一つが、<詩人の墓>しかも、本物の墓、画像入りで、良くここまで取材したと感心する内容。アドレスは、
http://kajipon.sakura.ne.jp/haka/h-sijin.htm
 本物のお墓もやはり寂しい。